不動産所有権付きリゾート会員権のお話し(前編)
タイトルだけ見ると、何それ?となる人は多いと思います。
その昔、バブル期に流行った「リゾート会員権」ですが、それを購入した人達が今、70代、80代となり、世代交代に伴い相続財産となって来ています。
という訳で、今回も「相続」に関するお話しです。そしてこれは、相続財産の中でも案外厄介な存在になり得る相続財産なので要注意です。
昔の記憶をたどって親御さんが「リゾート会員権」を持っていた、という人はこれを機会にそれが今どうなっているのかを確認し、もしまだ所有されていたら皆で話し合ってみてください。
まずは「不動産所有権付き」というところに注目してください。これは、ただのリゾート会員権ではなく、「リゾート施設(不動産)の所有権がついている」という代物です。
具体的に言うと、例えば、ホテル1棟を複数の会員で所有している、という意味です。当然そのホテルの登記簿には、その持ち主一人一人の名前が記載されており、毎年持ち主にはホテルの所在地の自治体から「固定資産税納税通知書」が届いています。
通常、数十人から数百人という会員で一つの建物を共有している為、一人当たりの固定資産税納付額は大した額にはなっていません。親御さんの家に、ご自宅以外の固定資産税納税通知書が届いていたら、不動産を他にも持っているという事であり、それが宿泊施設ならこのタイプの会員権に該当する可能性大です。
そんな「不動産所有権付きリゾート会員権」をあなたが相続したとします。
まず、相続した時点で不動産の所有者が変わりますので「相続登記」が必要になります。令和6年4月から相続登記は義務化され罰則もありますので、言うまでもなく放置はできません。
その場合、通常リゾート会員権の管理会社に連絡をして相続登記をする事になります。当然、相続登記費用のみならず、その会社に対する手数料を請求されます。そして、固定資産税の納付書が今度はあなたに届くようになります。更に、「年会費」の設定がある場合、そちらも請求されます。
「リゾート会員権は要らない」と思ったとします。売買可能なものであれば売却出来ますが、会員権によっては、市場価値がないものも多く存在しています。また、バブル期に流行ったものですので、運営会社の経営が破綻していれば施設の利用は出来なくなっているというケースも考えられます。
残念ながらコロナ禍でリゾート業界は打撃を受けていますので状況は更に厳しくなっていることでしょう。「リゾート会員権」は欲しいという人が居なければ当然のことながら売却は出来ません。
「会員権の相続を放棄したい」と思ったとします。しかし「この資産は要るけど、これは要らない」と言う事は出来ないので、相続放棄をするには全ての相続を放棄する必要があります。リゾート会員権の為に全ての相続の放棄をするのは、現実的とは言えませんよね。(相続放棄についてはこちらをお読みください。不動産の相続放棄についてはこちらをお読みください)
どうでしょうか。なかなか厄介なものだというのが見えてきました。
そして、バブル期の建物ですから老朽化が進んでいます。その不動産を取り壊すという事になれば、運営会社から恐らく所有者全員に、取り壊し費用の負担の依頼が来るのではないでしょうか。
というように、この「不動産所有権付きリゾート会員権」は将来的になかなかのリスクを含んでいるのです。
それでは、長くなってきましたので続きは後編で。
※行政書士は代理人になれません。お住まいの地域の市役所の法律相談会や弁護士会、法テラス、弁護士等にご相談ください