不動産と相続放棄

11月になりました。今年もあと2か月を切りましたね。
あっという間に今年も終わってしまいそうで怖いです。。。

さて、本日は不動産のお話しです。最近、当事務所の周辺でも空き家が増えてきました。テレビでも日本中、空き家が問題になっていると良く聞きます。
相続財産として実家が残り、しばらく放置しているというケースは結構多いと思います。
その理由として考えられるのは、
①相続人の間で相続財産の分割をどうするのか協議がまとまっていない
➁思い出のある実家を売却するのに抵抗があるものの住む人がいないので結果的に放置となっている
③相続人が居ない
④売却したくても売れない
という感じでしょうか。

という訳で、今回は「不動産と相続放棄」のお話しです。

相続放棄というと、故人の資産より借金の方が多かった場合をまず思い浮かべますが、借金は無いけど売れない不動産、いわゆる「負動産」が残されたという場合にも放棄を考える方は一定数いらっしゃると思います。相続財産に借金はなく、預貯金もほとんど無く、持ち家だけが残されたとしましょう。

その不動産が売却出来るとすれば、売って現金化すれば良いですが、買い手が見つからない場所だった場合「こんな遺産は要らない」と思うのではないでしょうか。

不動産の持ち主には「所有権」があります。固定資産税は徴収されますし、管理義務もあります。不動産を相続した場合「所有権」はあなたにやってきます。住む予定のない家の管理と、固定資産税の納付義務が生じるのです。という訳で、「相続放棄をしよう」と考え、相続があった事を知った時から3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きを行いました。

さて、ここで問題です。
不動産は「相続放棄」をすれば、今後一切あなたとその物件は関係なくなるのでしょうか?

答えは×です。
所有権を放棄したところで「管理責任」は他に管理者が現れない限りあなたに残ったままです。そして、相続放棄により所有権は失いましたので、「使用・収益・処分」することも出来ません。

では「管理責任」とは一体どのようなものでしょうか。相続放棄をした場合の管理責任は「自己の財産と同一の注意義務をもって管理すること」とされています。分かりにくい言い回しかと思いますが、軽過失は免責されますが、必要な注意を著しく欠いた「重過失」であれば責任を負うとされています。

具体例の一つを挙げてみましょう。
家の管理が全くされておらず、家の一部が壊れ、家の前を歩いていた通行人が怪我をしたとしましょう。あなたは家が壊れそうなのを随分前から知っており、他の人からもどうにかして欲しいと再三言われているのに何もせず放置していました。このような場合には、被害者から損害賠償請求をされる可能性が高いという事です。

では、「管理責任」から逃れるにはどうすれば良いのでしょうか。一番簡単なのは他の相続人に相続放棄をした旨を告げる事です。(相続放棄を裁判所で行っても、次の相続人に裁判所から通知が行くことはありません)

ですが、あなたが要らないものはその人も要らないと思う可能性が大きいですので、親戚間で次々に相続放棄が発生していくのではないでしょうか。結果的に相続人が誰もいなくなったら、次は「相続財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立てる事になります。選任されて漸く「相続放棄をした人の管理責任」は消滅します。

さて「相続財産管理人」が決まりました。が、これで終わりではありません。相続財産管理人には「報酬」を支払う事になります。「相続財産管理人」は家庭裁判所が選任します。弁護士や司法書士等が選ばれる事が多いとされています。その場合の報酬は月額1万円~5万円だそうです。報酬は基本的に相続財産から支払われますが、支払うだけの財産が残っていない場合は、相続財産管理人の選任の申し立てをした人が「予納金」を家庭裁判所に支払う事になります。

予納金の額も、家裁が決定します。報酬の他に財産管理人が業務を進めるのに必要な予算を含め、数十万~100万円と言われています。

ここまでお読みになった方は、不動産の「所有権」がいかに厄介なものとなりうるかがお分かり頂けたと思います。
因みに、令和5年4月27日より「相続土地国庫帰属法」が始まります。物凄く大雑把に説明すると「相続した要らない土地を国に渡す事が出来る制度」です。ですが、国庫への帰属手続きには、諸条件をクリアした上で負担金を払わなければなりません。持ち家の場合、条件の中の一番のハードルは「建物がない土地」というところかもしれません。つまり、あなたが家を解体撤去しないと国は受け取らないという事です。

という事で、不動産の相続は単純に相続放棄をすれば終わり、というものではない事がお分かり頂けたと思います。
不動産の相続が発生する可能性がある方は、相続が発生する前に、不動産のあるエリアの不動産事情(相場や需要など)を予め把握されておく方が良いかもしれません。そして不動産を相続した時には、急いで相続放棄をするのではなく、最善の方法を良く考えてください。あなた以外の相続人と予め話し合う事もお忘れなく。

<MEMO>
相続放棄についてはこちらをお読みください
不動産所有権付きリゾート会員権の相続についてはこちらをお読みください
「相続財産土地国庫帰属制度」についてはこちらをお読みください

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