今の日本社会は高齢者世帯と単身世帯の増加が進んでいます。
2世帯、3世帯が同じ家に暮らしていた頃は、若い世代が高齢になった家族のサポートをしていましたが、現在では独り暮らしの方が増え、少子化等により頼れる家族がいない人が増えています。
そのような状況の中、法的な備えをする事により、老後の不安を少しでも軽減できるようにしたいと考る方は多いのではないでしょうか。
当事務所ではその為には何が必要かを一緒に考え、みなさまのサポートをしています。

将来に備えるために必要なもの

時系列でみる必要書類は次の通りです。
必要なものは、その人の状況によって違ってきます。
例えば、ご家族等が近くにいて定期的に行き来のある方には見守り契約は必要ないと思われます。
何が必要なのかをまずは良く考えてみてください。


あなたが選んだ人や団体に定期的に訪問等をしてもらい、あなたの状態に問題がないかを確認してもらう為の契約です。


体力の衰えなどにより金融機関に行けなくなった時に、あなたが選んだ人や団体に代行してもらう為の契約です。入院手続きや手術の立ち会い等についても契約に含める事が可能です。


認知症等が発症した時に、あなたが選んだ人や団体に任意後見人になってもらう為の契約です。財産管理全般、医療や介護等の契約についての代理人になってもらえます。任意後見契約は公正証書で作成しなければなりません。
※任意後見契約を締結しておらず、後見人が必要になった場合は、家庭裁判所が後見人を選任します。


あなたの死後に必要になる葬儀、埋葬、各種契約の解約、役所等への手続き等を、あなたが選んだ人や団体にしてもらう為の契約です。最近ではスマートフォンやパソコンのデータ消去を含む遺品整理等を依頼する方も増えています。


あなたの死後、あなたの財産をあなたが決めた通りに分配する為の書類です。

よくあるご質問について

Q1.契約は締結後すぐに開始するのでしょうか?
見守り、財産管理契約については、ご本人が必要と思われた時から発効(契約の内容を実施すること)する事が出来ます。契約書を未来の為に作っておくと安心です。いざとなったら開始させればよいのです。任意後見契約については、ご本人の認知機能が低下するまで契約は眠った状態で、発効はありません。もしもの時の保険と考えてください。


Q2.将来、認知症などを発症して施設に入る場合、自宅を売却して資金を作りたいと思っています。どうすれば可能でしょうか?
任意後見契約書で任意後見人に不動産売却の代理権を与えれば可能です。任意後見契約を締結していない場合、あなたのお子さんであっても、あなたの所有する家の売却は出来ません。売却するには家庭裁判所に申し立てをし、「後見人」の選任をしてもらう必要があります。後見人の選任以降、あなたの財産は全て後見人の管理下におかれます。


Q3.必要な契約書をまとめて作る事は可能ですか?
財産管理等委任契約、任意後見契約書、死後事務委任契約の契約者が同一の場合は、まとめて一つの公正証書の契約書にする事が可能です。見守り契約と任意後見契約、財産管理委任契約と任意後見契約の組み合わせも可能です。


Q4.財産管理等委任契約を結んでいても銀行によっては対応してくれない場合があると聞きました。実際にはどうなのでしょうか。
現在金融機関によって対応は様々です。銀行によっては、代理人カードの作成が出来ますので、ご本人が予めカードを作成し、必要になったら契約の相手方に渡す事が、現金の引き出しについては確実と言えます。

●参考資料●

銀行名 カードの名前 条件
三井住友銀行 代理人キャッシュカード
(代理人氏名手続き)
2親等(祖父母、親、子、孫、兄弟姉妹)以内の親族
三菱東京UFJ銀行 代理人(家族)カード 満16歳以上の生計を共にする親族1名
みずほ銀行 代理人(家族)カード 同居している生計を共にする親族
ゆうちょ銀行 代理人カード 本人が窓口で手続きをする。通帳、届出印、本人確認できるものがあれば作成可能。

令和5年4月現在


Q5.銀行の代理人カードがあれば財産管理等委任契約はいらないのではないですか?
この契約書を作成する事により、当事者間だけでなく、第三者にご本人が依頼して管理して貰っている事を明確に示す事が出来ます。つまり、お互いに合意した上で締結された契約である事を周囲に説明出来る訳です。後に相続人等とトラブルにならないよう、受任者を守るためにも、大切な契約書と言えます。また、財産管理等委任契約は、受任者を緊急連絡先とする事、手術の立ち会い、入院手続きを行える旨等を記載出来ます。財産管理を依頼するにあたり、報酬を支払う場合には詳細を契約書に記載します。受任者があなたに管理状況の報告をする事を約束してもらう為にも契約が必要です。


Q6.公正証書とは何ですか?
公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公文書です。公証人は、元裁判官、元検察官等です。このような公証人が作成する書類は、形式的証明力が働き、極めて強力な証拠力を有します。公正証書遺言書は家庭裁判所の検認が不要です。「任意後見契約」は公正証書で作成する事と定められています。遺言書もトラブル回避の為に「公正証書遺言書」を作成する方が多いです。また、「財産管理等委任契約」「尊厳死宣言」は第三者に提示する書類となりますので、公正証書での作成をお薦めします。


Q7.契約する相手を選ぶ際の注意点はありますか?
受任者に親族を選ばれる方は多いと思います。ご自身が信頼できる方を選ぶのは当然ですが、年齢が近い方を選ばれた場合、相手も同じく年を重ねていきますから、契約の発効時に本当にお願い出来るかどうかが不透明です。自分より10歳以上年下、出来れば親子ぐらい年齢が離れた人を選ぶ事を考えてみてください。また、遠方にお住まいの方を選ばれる事は、緊急時の対応が困難ですのでおすすめ出来ません。頼める人がいない場合は、士業(司法書士、行政書士等)やお住まいの地域の支援団体も視野に入れてみてください。


8.尊厳死を望んでいます。終末医療の意思表示等はどうすれば良いですか?
医師には延命治療を停止する権限はありませんので、あなたの意思表示がなければご家族が決断されない限り停止される事はありません。回復の見込みのない延命治療は受けない尊厳死を望まれる場合には、「尊厳死宣言公正証書」の作成をご検討ください。
この書類があれば100%ご本人の意思が尊重されるとは言い切れませんが、日本尊厳死協会による医師へのアンケートでは、尊厳死宣言をされている場合、9割の医師が尊重すると回答しています。


Q9.遺言書は必要なのでしょうか?
遺言書は、あなたがあなたの財産を、残された方にあなたの意思で分配する為のものです。遺言書が無ければ、民法で決めた法定相続分の通りに分けるか、民法で定められた法定相続人に該当する方全員が揃って「遺産分割協議」を行い「遺産分割協議書」を作成する事になります。
当然の事ながら、遺産の額に関わらず、遺族はこの2つの方法のどちらかを選ぶ事になります。昔と違い、銀行での手続き等はより厳密になっており、遺言書がなければそれだけ必要書類も増え遺族の負担が増えて行きます。

また、昨今では高齢化社会に伴い認知症のご家族がいる方、海外在住者がいる方、前婚時のお子さんがいる方も増えています。その場合、相続手続きはより複雑になっていきます。全員での協議が完了しない限り、相続手続きは進められません。遺言書があれば、書かれた内容の通りに分配する事になりますので相続人全員の意思能力も話し合いも必要なく、手続きを行う事が出来ます。

ところで資産家ではないから遺言書は要らないと言われるがいらっしゃいますが、本当にそうでしょうか。
あなたが亡くなった後、それまでにかかった医療費、葬儀代等は相続財産から支払う事になりますが、相続手続きが完了するまでは、遺族の誰かが立て替える事になります。手続きが長引くほど、立替期間も長くなる訳です。つまり、相続手続きが円滑に進められることは、遺産の額に関係なく遺族の皆さんの負担を軽減する事になるのです。

遺言書の作成を特におすすめするのは、お子さんのいない方、独身の方、ご家族の仲が良好ではない方、相続人が多い方、相続人の中に意思能力のない方、海外在住の方がいる場合です。残されたご遺族の負担を軽減する為にも、遺言書の作成、遺言執行者の指定をご検討ください。

※遺言書については、こちらもご覧ください


Q10.遺言執行者とは何をするのですか?
遺言執行者とは、遺言書遺言の内容に基づき相続手続きを進めていく人の事です。

遺言執行者は、単独で相続手続きを行う事が出来ます
遺言執行者の指定には二つの方法しかありません。

①遺言書に、ご自身が決めた遺言執行者を書いておく
➁遺言書に記載がない場合、ご家族が家庭裁判所に申し立てをして選任してもらう

遺言執行者には、未成年者と破産者以外、誰でもなる事が出来ます。通常、相続人や遺言書作成に関わった士業を選ばれる方が多いようです。

相続人の中に連絡がつきにくい方、海外在住の方、認知症の方がいらっしゃる、また相続人に該当しない孫、甥、姪等への遺贈を考えている方は、遺言執行者の指定が必須と言えます。遺言書を作成する場合、遺言執行者の指定をぜひご検討ください。


将来に対し気になる事、不安を感じている事があればご相談ください。
一緒に対策を考えていければと思います。いつでもお問い合わせください。