購入時資金援助を受けた不動産について
マイホームを購入する時、親御さんから資金援助を受けたという話しは度々お聞きします。これは親から子への「贈与」にあたり、贈与である以上「贈与税」の対象となります。暦年贈与の控除額は令和6年現在、年間110万円ですので、110万円を超えた金額が贈与税の課税対象額となります。
ですが、実際には税金対策として、資金援助を受けた割合で援助してくれた人との共同名義にする事が多いと思います。例えば、購入資金の半分を親御さんが払い、家の名義はお子さん1/2、親御さん1/2の持ち分で不動産登記されているようなケースです。
つまり、その家の半分は親御さんの財産である訳です。従って親御さんが亡くなられたら、お子さんの家の半分は相続財産となります。
お子さんが一人っ子で相続人は他に誰も居ないのであれば住んでいる相続人が相続して終わりますが、他にも相続人がいる場合、つまりご兄弟姉妹がいる場合は問題が起こるかもしれません。
何故なら、親の遺産の相続権は兄弟姉妹全員平等にあるからです。
例をあげてみましょう。
Aさん一家は、持ち家に住む子供2人の4人家族でした。子Cが結婚し、新居を購入する際、父親が購入費の半分を出してあげると申し出ました。贈与税の回避を考え、購入費を出した割合に基づきCが1/2、父親1/2の持ち分で不動産登記しました。
その後、母親が他界し、数年後、父親も亡くなり相続人は子CとDの二人となりました。父親は遺言書を残していませんでした。
子の相続割合は平等に1/2です。Cが実家と父の残した金融資産を折半しようとDに伝えると、Dから「Cの家は半分お父さんの持ち物だよね。折半する遺産には当然それも該当している事、忘れないでね」と返事が来ました。
この場合、Cが居住する家をDに1/4渡すというのは現実的ではないので、相続人間の話し合いでCの家の父親の持ち分1/2の評価額を決めるというのが一般的です。
という事で、父親が残した「実家、金融資産、Cの家1/2の評価額」を足したものが総資産となり、それをCとD二人で分ける事になります。
このケースは実家と金融資産があるので相続の分配の為にCがマイホームを売却する必要はないでしょうが、もし父親の財産がCの家の持ち分1/2とわずかばかりの預貯金のみだった場合は話しが違ってきます。Cが家に住み続けるためには、Dの相続分の不足を金銭で支払う必要が出て来ます。Dがいらないよ、と言えば別ですが、なかなかそうはならないでしょう。Cに不足分を支払う資産が無い場合、場合によっては家を売却して資金を作らなければならなくなります。
ここまで読まれて、Cは父親が生きているうちに名義変更をしておけばよかったのではないかと思われる方がいらっしゃると思います。それでは、生前の名義変更について考えてみましょう。
父親が生きているうちに名義変更をすると、当然それは「生前贈与」になりますので、「贈与税」の対象となります。暦年贈与の基礎控除額は年間110万円ですので、不動産のような高額な贈与の場合、間違いなく贈与税がかかります。また、名義変更の登録免許税は贈与の場合、相続登記の5倍です。
贈与税よりも相続税の方が税率は低くなりますし、相続税には「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」の基礎控除額がありますので、故人の総資産額が基礎控除額内であれば相続税はかかりません。
生前贈与が良いのか、相続が良いのか、税金が高くても相続の前に自分のものにしておいた方が安心なのかどうか等、ケースバイケースですので良く考えなければなりません。
さて、相続時に名義変更する事を選択した場合には、次のいずれかが必要になります
- 遺言書
- 遺産分割協議書
住んでいる家の名義に親御さんが含まれている場合で相続時の名義変更を選んだ場合、親御さんに「●●に不動産●●を相続させる」と明記した内容を含む遺言書を作成して貰うか、親御さんの死後、相続人全員で話し合う遺産分割協議を行うかの二択になります。
親御さんの感覚としては、資金援助をした段階で「子供にあげた」「子供の家」となっているかと思いますが、登記簿に親御さんの名前がある以上、それは「親の資産」です。亡くなれば当然に親御さんの名義分は相続財産となります。
遺言書の作成は、遺言能力が必要ですのでお元気なうちにしか作成する事が出来ません。また、遺言書は、後々揉め事を引き起こさない内容にする事が大事です。遺留分の配慮も大切ですし、書き方を間違えると、意図したものとは違う結果になってしまうリスクがあります。遺言書作成は、専門家に相談する事をおすすめします。
という事で、お住まいの不動産が親御さんとの共同名義になっている方は、どのタイミングと方法で名義変更を行うのか、一度考えてみてください。
そして、遺言書や遺産分割協議書の作成については、ぜひご相談ください。