お一人さまが亡くなった時
あっという間に3月になりました。桜の季節も近いですね。そして花粉症の季節になり、当事務所の場合、全員が悩まされております。
さて先日、髪を切ってもらっている時にこんな質問を受けました。
お子さんをお持ちのスタイリストさんからの質問で、もしかすると独身の親族がいらっしゃるのかもしれません。そういう方は沢山いらっしゃると思いますので、ご参考までに今回はその時の内容を、会話形式で書いてみたいと思います。
「例えば、独身の人が亡くなった時、残された親族はその人の遺産ってどうやって知るんですか?」
「その人がちゃんと遺言書を残すとか、エンディングノートとか財産リストを書き残してくれてればいいけど、無かったら家の中を探し回るしかないかな。通帳探したり、郵便物探したり。家探し状態になるよね」
「えーーーーっ!!!大変じゃないですか、それ!」
「しかも、財産ってプラスばかりじゃないから。借金も、連帯保証人になっていたらそれも、全部相続の対象だから。信用情報調査機関への問い合わせは出来るけどそれで全部が分かる訳ではないし」
「それってめちゃめちゃ困るじゃないですか!!」
「しかも借金が凄い額だったら相続放棄を考えると思うけど、放棄するには期限があって、自分に相続が発生した事を知った時から3か月以内にしないといけない。それを超えると基本的にはできないから案外時間がない」
「調べるのは大変ですよね?」
「大変だと思う。自分には財産が無いから遺言書なんて必要ないっていう人が多いけど、借金の存在を随分経ってから知らされたら、親族にすると非常に困るよね。プラスの遺産だけだとしても、どの銀行に預けているのか分からないと手続き出来ないし、ネット銀行とかそれこそ分かりにくいし」
「でも、借金があるとかって親族に伝える人ってなかなか居ないですよね。怖いなぁ~」
「独身の人が亡くなって、兄弟姉妹、甥姪が相続人になるケースが今後どんどん増えると思うのね。親子でも親の財産全体を知っている人って少ないと思うけど、兄弟姉妹、ましてや甥姪じゃ本当分からないでしょうね」
「叔父叔母の事は分からないですよね。疎遠だったりしたら突然巻き込まれたって感じになりますよね」
「そう。どこに何があるのか本当に分からないと思う。私自身、叔父の死後手続きを全部ひとりでしたけど、あの時は流石に困ったから。お葬式も、埋葬も、叔父は何も書き残してなかったから、私が全部決めなきゃならなかったし。大事な書類がどこにあるのかもちろん聞かされてなかったし。銀行の通帳、役所関連の手帳とか、健康保険証とか家の中を全部探して。探しながら、これは家探し状態だなって。役所も銀行も、平日しか開いてないからそれも結構大変で。年金事務所も混んでたし。医療費とか葬儀代とかの支払いは全部立替えなきゃならなかったし、現金払いが多かったし。後、家は賃貸だったから遺品整理も期限があったし」
「はぁ~~~~大変ですね」
そうなんです。大変なんです。本当に大変なんです!しかも、東京在住の叔父だったので、奈良からの移動も結構大変でした。何度も通える距離ではないので、短期間に手続きを進める必要がありました。
という訳で、今後私のように困る親族が確実に増えると思います。
「遺言書を書くほどの財産はないから」と言う人は多いのですが、「遺言書を書く人=資産家」という考えは捨てましょう。
また、遺言書はなくてもせめて財産リストだけでも残してくれていたら・・・と甥姪、兄弟姉妹、子、つまりすべての遺族は感じると思います。
「兄弟姉妹にはちゃんと伝えているから」という方もいらっしゃいますが、すみません。兄弟姉妹は年齢が近いので、ちゃんと伝えていても、人の寿命は誰にも分かりませんので、将来的にどうなるか分かりません。また、あなたの死後皆さんの関係が良好に保たれるように、あなたの意思表示は文書化して残しておきましょう。
亡くなった後には、医療(入院)費の支払い、葬儀費等色々必要になります。それらの費用は、基本的には相続財産からの支払いになりますが、預金からすぐには引き出せませんから、まずは遺族が立て替える、もしくは預金残高が足りなければ、遺族が支払わなければならなくなります。しかも、その額は少額とは限りません。
遺産が多くても少なくても、相続人には「死後事務」をしてもらう必要が生じます。
その負担を少しでも軽くする為に、「遺言書」の作成を、そして出来れば「死後事務委任契約」も考えてみてください。「死後事務委任契約」についてはまた後日。
(死後事務委任についてはこちら)