相続と戸籍謄本について

早いもので、令和になってから6年目を迎えました。今年は4月1日から「相続登記の義務化」が始まります。今まで、相続登記は義務ではなかった為、ご主人が亡くなった後、家の名義変更はせず奥様が継続してその家に住まわれているというケースは多いと思います。

しかし、令和6年4月1日以降、相続登記の義務化により3年以内に登記を行う必要が出て来ました。当事務所でも既に相続登記に関するご相談が増えており、司法書士と連携してご依頼を受けています。
という事で、本日は相続登記等相続手続に必ず必要になる、故人の戸籍謄本についてのお話しです。

人が亡くなると、その方の法定相続人への相続が開始します。不動産、預貯金、金融資産等、全ての遺産の相続が自動的に開始します。亡くなった方が遺言書を残されている場合はその内容に従って遺産の分配を行う事になりますが、遺言書がなければ民法で定められた相続分の通りに分配するか、相続人全員で話し合い(協議)、分配を決める事になります。
それ故、当然の事ながら相続手続を始めるには、まず「法定相続人の確定」をする必要があります。どうやって確定するかというと、故人の「出生から死亡までの全ての戸籍謄本」を確認するのです。

何故全ての戸籍が必要なのでしょうか。一番の理由は、相続の第1順位である「子」の確認の為です。
故人が認知した子が居れば戸籍に記録されます。「婚姻した事がない方=子がいない」とは限りません。
認知された子には、配偶者との間に生まれた子と同じ相続権があります。しかし認知した子の記載は、認知した時点での戸籍に記載されるだけですので、死亡時、直近の戸籍には記載されていない可能性があります。故に、出生から死亡までの全ての戸籍を調べる必要があるのです。

また、再婚された方の場合、前妻との子がいる場合があります。この場合も、前妻との子は現在の婚姻の子と同じ相続分を持つ相続人です。その確認には現在の戸籍以前の戸籍を確認する必要があります。
という訳で、亡くなられた方が未婚でも既婚でも、出生から死亡までの全ての戸籍謄本が必要となります。そして、相続登記申請をする法務局や、預貯金等の相続申請をする金融資産等からは遺言書が無い場合、故人の出生から死亡までの戸籍謄本の提出を求められるのです。

次に戸籍の取り方ですが、まず死亡時の戸籍がある市・区役所から全ての戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)を取得します。大抵の方は、その地で生まれて亡くなるまで引っ越す事なく住み続けたという事はなく、引っ越しをし、それに伴い本籍を移動させる方が多いので、他の場所から「転籍」してきたという記載が戸籍謄本にはあると思います。その転籍する前の市・区役所に今度は全ての戸籍を請求します。そこにもまた「転籍」があれば、またそちらに問い合わせる、という事を出生時の戸籍にたどり着くまで繰り返すのです。

本籍を変えた時、婚姻した時、離婚した時には新しい戸籍が作られますし、役所は今まで「戸籍の改正」を6回しています。直近の改正は電子化に伴う平成6年の改正。その前は昭和32年の改正です。改正時に生まれていた人は、全員戸籍が改正されています。

もうお分かり頂けたかと思いますが、人の一生において戸籍は何通も作られます。そして、平成6年以前の戸籍は手書きです。その戸籍を読み解き、全ての戸籍を揃えるのはなかなか手間のかかる作業となります。また、相続関係を正しく理解するには民法の知識が必要ですので、相続人の特定に関しては専門家に依頼される事をおすすめします。実際、ご相談頂く方の「相続人」の認識と、民法上の「相続人」が違うというケースは多々あります。特に相続人の中に亡くなられた方がいらっしゃる場合は要注意です。

当事務所では、「相続人の特定」「相続関係説明図」(相続登記に必要)の作成、それに伴う戸籍謄本の取得業務を行っています。日本国内であれば地域を問いません。いつでもご相談ください。

ところで、相続手続に必要となる戸籍の取得ですが、一番大変なケースとなるのは、故人がおひとりさまで兄弟姉妹、もしくは甥姪が相続人となる場合です。
それについては、次回詳しくお話したいと思います。

※「兄弟姉妹」の相続についてはこちらをお読みください
※「甥姪」の相続についてはこちらをお読みください

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