遺言書に関する疑問にお答えします

「いつかは遺言書を書かないとね」と言われる方は多くいらっしゃいます。
「いつかは」と言っているうちに、書けなくなってしまう方も多いのですが、その「遺言書を書くにはまだ早い」と考えられる理由の一つが、「今書いても書き直さないといけなくなる」と思われている方が多いからではないかと思います。

例えば、ご夫婦の場合「夫(又は妻)に相続させると書いても、相手が自分より先に亡くなるかもしれない」と考える方が多いでしょう。また、「遺言書を書いたら財産を使い辛くなるのでは」とか「財産が増減する度に遺言書を書き直さなければならないのでは」という心配をされる方も多いようです。

結論から言いますと、それに対応できる遺言書を書けば良いのです。

「配偶者に●●を相続させる」と書いて、先に配偶者が亡くなってしまった場合に対応できるように、「もし配偶者が先に亡くなった場合には●●に相続させる」という内容を書いておけば、書き直す必要はありません。(予備的遺言と言います)

財産の増加については、遺言書に書いた資産以外はどうするのかを書いておけばよいのです。「遺言書に記載していない財産は●●に相続させる」と書けば良いのです。
財産の減少については、何の問題もありません。遺言書に残高を書く訳ではありませんので、ご安心ください。また、口座を調べてみたら、一銭も入っていなかったとしても、問題にはなりません。そして、口座を閉じていても問題にはなりません。

因みに、遺言書作成には「遺言能力」が必要ですので、いつかいつか、と先延ばしにするのは良くありません。認知症が発症したら遺言能力は無くなりますし、ご高齢の方はお元気な方でも転倒などがきっかけで、急激に体調が悪くなられる方が多いです。
遺言書は、書けるうちに書いておく。これが鉄則です。

ところで、遺言書作成にあたって財産目録を作成する事になりますが、特にご高齢の方はご自分の「資産の棚卸が大変」だと感じるようです。
「ご本人がご本人の資産の把握が大変」だと感じるという事は「ご本人ではない相続人が亡くなった方の資産を把握するのはもっと大変」だと思います。遺言書があれば最初からどこに問い合わせれば良いのかが分かっている訳ですから、残されたご遺族からは感謝されると思います。

相続手続きのご相談、ご依頼を受けるたびに、「遺言書があれば良かったのに・・・」というケースに遭遇します。遺言書があれば簡単に手続きが出来たのに、無いが為に手続きが長期化するケースは多いです。長期化すると、相続人はその間ずっと金銭的にも心理的にも負担を負う事になります。また、遺言書が無ければ相続人全員で話し合う事になりますが、この「協議」が色々な問題を起こす事が多いのです。
そして、来年令和6年からは相続登記の義務化が始まります。相続手続きを確実に、長期化させずに行う必要がより増してきます。

とにかく、遺言書作成は先延ばしにしない事。書けるうちに書いておく。
そして、法的に有効かつ揉め事を起こさない遺言書を作成する事が基本です。

若いうちに作成するのなら、「自筆証書遺言書」も選択肢に入りますが、ご高齢になられてから作成される場合は「公正証書遺言書」一択と考えます。遺言書を誤字なく手書きする事は難しくなりますし、本当に本人の意思で作成したのか相続人に疑いを持たれる可能性を回避出来るのは、公証人(元裁判官、元検察官など)、証人2名の計3名が立ち会い署名する公正証書遺言書だからです。

遺言書は簡単に書けると思われがちですが、遺言書は契約書よりも細かく民法で定めたルールがある書類です。有効な遺言書を作成するには、法的知識が必要です。そして公正証書遺言書を作成する場合、ご本人が直接公証役場に相談するのではなく、行政書士等の専門家に文案作成を依頼し、専門家が依頼者の意思を元に文案を作成した上で、公証役場と調整を行うのが一般的です。(自筆証書遺言書にしても、法的に有効な遺言書にする為、文案作成は専門家に依頼する事をおすすめします)

日本で遺言書を書く人はまだまだ少ないのが現状です。ご自分が相続で困らなかったから大丈夫だろうという方もいらっしゃると思いますが、現代は核家族化が進み、親族との繋がりが希薄になっています。話し合うにも連絡先すら分からないという事は良くあります。そして、景気が良いとは言えない世の中ですので、金銭に直結する相続でのもめごとは起こりやすくなっていると言えるでしょう。それを回避するにはあなたが、あなたの意思で遺言書を書いておくことしかありません。

遺言書を作成しようと思われましたら、いつでもご相談ください。

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