そもそも遺留分とは?

テレビで相続関連のドラマや特集を見ていると良く「遺留分」という言葉が出て来ます。聞かれた事がある方は多いのではないでしょうか。
そもそものお話しになりますが、「遺留分」とは一体何なのでしょうか。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限確保されている遺産の取得割合の事です
遺留分がある相続人を具体的にあげると、配偶者、子(直系卑属)、子がいなければ両親(直系尊属)となります。亡くなった方の兄弟姉妹は法定相続人になる場合はありますが、遺留分はありません。(もし亡くなった方のご両親も亡くなっていて、祖父母がご存命なら、祖父母が直系尊属に該当します)

また配偶者や直系尊属、直系卑属であっても、相続欠格、廃除、相続放棄をした人には遺留分が認められません。そして相続放棄をした人の子にも遺留分は認められません
遺留分の割合は、「法定相続分の半分」(親のみが相続人の場合は1/3)です。

例えば、夫が亡くなり遺産が2000万円だったとしましょう。

●遺産2000万円 相続人=妻、子2人●

【法定相続分】
妻:相続割合1/2=1000万円
子:相続割合1/2=各500万円 (1000万円÷人数)

【遺留分】
妻:法定相続分の1/2=500万円
子:法定相続分の1/2=各250万円(500万円÷人数)

それでは、遺留分が問題となるのはどのような場合なのでしょうか。
それは、亡くなった方が「遺言書」を残されていた場合です。もしその遺言書に遺留分を考えずに各相続人の相続分が書かれていた場合、初めて遺留分が問題となる可能性が出て来ます。
逆に言えば、遺留分を満たした分配であれば問題とはなりません。

また遺言書がない場合は、法定相続分通りの分配か、相続人全員が話し合いで相続分を決めるかの二択になりますので、遺留分は問題となりません。遺産分割協議を行い、相続分を相続人全員で話し合って分配を決定する事になります。という訳で、そもそも遺言書が無い場合の相続では「遺留分侵害額請求権」の行使は出来ません

さて、法定相続人が複数人いる状況で、「全ての財産を妻に相続させる」という遺言書があったとします。
例えば亡くなられた人にお子さんが居た場合、お子さんには遺留分がありますので、この遺言書は遺留分の配慮がない遺言書と言えます。
しかし、遺言書を作成した人(遺言者)は、妻の生活が困らないようにと、子供は分かってくれるだろうと思った上で全財産を妻に渡したいと考えたと推測することが出来ますし、そう考える方は多いと思います。子供は、妻が亡くなった時点で相続してくれれば、と考える方は多いでしょう。

ではこのような場合、全く相続分が無いと遺言書に書かれた相続人には何が出来るのでしょうか。
次の二択になります。

①遺言書の内容の通りで良いと考え何もしない
➁「遺留分侵害額請求権」を行使する

過去のブログでも書いていますが、遺留分は権利がある相続人が主張をしなければ問題とはなりません。遺留分を貰いたいと言わなければ、遺言書の通りに相続を行う事に、法律上何の問題も生じません。(遺留分侵害額請求についてはこちら

それでは、遺留分が問題となるのはどのような場合かというと、相続人が兄弟姉妹のみで分配に不公平がある、再婚した親が全ての財産を配偶者に相続させるとしたような場合などではないかと思います。
自分には相続分が全くないというのが一番分かりやすい状況ですが、それ以外の場合は遺産を確認した上で、自分の遺留分の試算を行い、遺言書に書かれている額では遺留分に足りない事が分かった上で他の相続人に「遺留分侵害額請求」をする事になります。
最初は相続人間の話し合いですが、話し合いがつかない場合は家庭裁判所での調停、それでも決着がつかない場合は裁判という事になっていきます。弁護士案件となります。

なお、「遺留分侵害額請求権」には時効があります。相続開始と遺留分侵害を知ってから1年、相続の開始や遺留分を侵害する遺言書の存在を知らない場合等は相続開始から10年で遺留分侵害額請求権が消滅します。

何度も繰り返しますが、遺言書が無い場合は「遺留分侵害」には当たらず、遺産分割協議を行う事になります。こちらには期限はありませんが、特別受益と寄与分の主張は10年以内ですので実質、相続開始から10年以内に行わなければ、原則として法定相続分での相続となります。
因みに、遺言書が無い相続で、他の法定相続人が頼んでも遺産分割協議を行ってくれない場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てる事になります。

【まとめ】

■遺留分が問題となる可能性があるケース■
・遺言書で遺留分に満たない相続分とされた法定相続人がいる

■遺留分が問題とならないケース■
・遺言書がない
・遺言書に書かれた内容が、各相続人の遺留分を満たしている
・遺留分に満たない相続分とされた相続人が、遺言書に異を唱えない

■遺留分侵害額請求の期限■
・相続の開始と遺留分侵害を知ってから1年
・相続開始や遺留分侵害等を知らない場合、相続開始から10年

遺言書を作成する時には、ご自身の法定相続人を正しく把握し、遺留分についても考慮した内容とするのが「もめない遺言書」を作成する上で大切なポイントです。
いつでもご相談ください。

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