「おふたりさま」の備えとは
「おひとりさま」という言葉は良く耳にしますが、最近「おふたりさま」という言葉も聞くようになりました。
子供がいない夫婦を「おふたりさま」と呼ぶそうです。私自身「おふたりさま」ですが、近年この「おふたりさま」が増えています。
2021年に行われた第16回出生動向基本調査によると、「結婚持続期間15年の夫婦」で「おふたりさま」の割合が、1977年には3%でしたが、2021年には7.7%と約2.6倍に増加しています。
「おふたりさま」該当者の私たち夫婦は、将来の備えについて時々話しています。
二人同時に亡くなる事は珍しいでしょうから、どちらかは将来的に「おひとりさま」になる訳です。
そして、「おひとりさま」になると同時に発生する「相続」は、何も備えがなければなかなか大変になる可能性があります。
「おふたりさま」がまず初めに備えるべきは「遺言書」です。最近芸能界でも亡くなるには早すぎる年齢の方の訃報を聞く事が多いと感じている方は多いと思います。その事からも分かるように「遺言書を書くのはまだ早い」は無いと思います。
子の無い夫婦の場合、遺言書はある意味「保険」になります。私自身、現在50代ですが保険だと思って夫婦そろって数年前に遺言書を作成しました。
何故なら、「おふたりさま」の場合、子が居ませんので相続人は配偶者と両親、もしくは両親が他界していれば配偶者と兄弟姉妹になるからです。法律に決められた相続分は次の通りです。
【親がいる場合】 配偶者:3分の2 親:3分の1
【親が他界、兄弟姉妹がいる場合】 配偶者:4分の3 兄弟姉妹:4分の1
遺言書がなければ、相続人は法定相続分通りに遺産分割するか、遺産分割協議を行い配分を決める必要があります。
ご両親には遺留分がありますが、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、ご両親が亡くなっていて遺言書があれば全てを配偶者に相続させることができます。そして、ご両親の遺留分はご両親が主張をしなければ分配する必要はありません。ご両親が何も言われなければ配偶者が全てを相続する事が可能です。
困るケースは、認知症の親御さんと配偶者が相続人となる場合です。この場合、遺産分割協議が出来ませんので法定相続分通りの分割か、成年後見制度を利用するしかなくなります。
法定相続分通りに分割した場合、親御さんに渡された遺産は、将来的に親御さんの相続人に渡る事になります。将来的にも配偶者のものにはなりません。
それでは遺産分割協議を選択しようとすると、今度は別の問題が出て来ます。認知症の方の場合成年後見制度の手続きをしなければならなくなります。成年後見制度は開始すると親御さんの財産管理は亡くなられるまで後見人の管理下に置かれる為、デメリットを感じられる方が多いのが現状です。つまりハードルが高いのです。それならば法定相続分の通りに相続しましょうとなる可能性が高いと思います。
遺言書がない場合の相続については他にも注意点があります。
遺産は不動産が主な財産で預貯金はさほどないという場合。このような場合には、法定相続分をご両親や兄弟姉妹に渡す為に家を売却しなければならない、というような事態に陥る事があります。
言うまでもなく、相続の発生により住む家がなくなるという事態は回避したいところです。
というようなトラブルを抱えない為に必要なのは「遺言書」です。
残された配偶者が安心して暮らせるように遺言書の作成は必須です。また、もし二人とも同時に亡くなった時どうするのかも遺言書で指定する事が出来ます。
「予備的遺言」です。相続人が居ない人は遺言書がなければその遺産は国庫に入る事になります。自分の資産をどうするのか。将来の事を考えて、遺言書を作成しておく事は大切な事です。
次に必要になる備えは、高齢期の対策です。
元気でいるかどうか定期的に様子を見て欲しい、自分で銀行に行くのが困難になった、認知症を発症した、入院する事になった、というような時に頼れる人を見つけて契約を締結しておく。亡くなった後、葬儀や納骨、様々な死後事務をしてくれる人を探しておく必要があります。
分かりやすく言えば、子供がいる人なら子供がしてくれることを代わりにしてくれる人を探しておくという事です。
自分が安心して任せられる人や団体を探し、見守り契約、財産管理等委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約などを締結する事になります。その他、終末期の医療をどうするのかを自分で決めて書類にする尊厳死宣言書の作成をされる方もいらっしゃいます。延命治療をどこまでするのかを伝える書類です。
おふたりさまは将来的におひとりさまになりますので、おひとりさまと同じ備えが必要になります。
仲の良い甥姪がいらっしゃる場合、その方達と契約書を交わすという事もありますが、親戚がいらっしゃらない場合は士業や団体に依頼するのが一般的だと思います。契約を締結する時のポイントは、年齢の近い人ではなく、出来れば親子ほどの年の離れた人と結ぶ事です。(友達など年が近い場合はどちらが先に亡くなるか分からない為)
家族形態が変わり、おひとりさま、おふたりさまの増加により、高齢期のサポートが必要な人が増えていますが、法整備も社会もまだまだ追いついていないのが現状です。
行政書士としてどうこの問題を考え取り組んでいくのか、将来的に私自身誰にサポートを依頼するのかが私にとっても課題となっています。
「おふたりさま」はいつか「おひとりさま」になる日が来ます。
まずは将来についてご夫婦で話し合い、遺言書を作成される事から始めてみられてはいかがでしょうか。
いつでもご相談ください。
◆関連記事のリンク◆
●子がいない夫婦の相続
●配偶者が亡くなった時の相続
●見守り、財産管理等委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約等の終活サポートについて