同性パートナーと相続

世界の国と地域では2000年代に入ってから次々に同性婚が認められてきています。2022年11月の時点で33の国と地域で同性同士の結婚が可能になりました。現在、G7の中で同性婚が認められていないのは日本だけです。
残念ながら日本は人権後進国という状況です。世論調査では同性婚に賛成する人が過半数を超えており、20代~30代では8割を占めているというデータもあるにもかかわらずです。民意との乖離を感じずにはいられません。

婚姻により配偶者になるメリットは色々思い浮かべる事が出来ると思いますが、その中でも配偶者に認められている重要な権利の一つは、相続権です。
法的に認められた配偶者は常に、相続人となります。しかし、同性婚が認められていない今の日本では、同性カップルは法的な配偶者にはなれませんので、何年連れ添っても、お互いに頑張って築き上げた財産がいくらあっても、法律上の相続権がない。では、どうすればパートナーに財産を残せるのかというと、遺言書を作成するしかないのです。

現在、地方自治体でパートナーシップ宣誓制度の導入が始まって来ています。当事務所がある奈良県生駒市でも令和3年4月からこの制度がスタートしましたが、内容は配偶者に認められる権利とは程遠いものです。相続権はありませんので、相手に遺産を渡す為には「遺贈」しかありませんし、配偶者が相続において認められている遺留分もありません。そして、遺贈をするには遺言書が必要となります。
しかし、遺言書を書いたとしても被相続人(亡くなられた方)のご家族が、遺言書の内容に意義を申し立てる恐れもあります。
それでは、どうすれば良いのか。現時点では公正証書遺言書を作成するのが最善の方法となります。

公正証書遺言書とは、公証役場で公証人が作成する遺言書です。公証人は、法務大臣から任命された元裁判官や検察官、弁護士です。その公証人が作成する遺言書が公正証書遺言です。作成時には証人が2名必要になります。法律のプロが作る遺言書ですので法的に勿論有効な内容ですし、証人もつきますので遺言者の意思に反して書かれたものだとか、偽造された遺言書だ、というような異議申し立てを押さえる効果を持ちます。
作成時にはもう一つ必ず決めておくべき事があります。それは遺言書で「遺言執行者」の指定をしておくという事です。

遺言執行者は、相続手続きを行う人です。遺族と揉める事が予想される場合、執行者には遺贈相手であるパートナー以外の人を選任しましょう。おすすめなのは、行政書士や司法書士といった専門家です。執行者は手続きを行う上で、法定相続人(ご両親やご兄弟)と連絡を取る必要が出てきます。第三者である専門家に頼んでおけば、色々な意味でスムーズに手続きが行えます。
執行者を決めていない場合、残されたパートナーがご遺族と相続手続きをしなくてはならなくなりますので、執行者は必ず決めておくべきだと思います。

自筆証書遺言書と比べて、公正証書遺言書は費用が掛かります。しかし、確実にパートナーに遺産を渡す為には、必要なものです。

公正証書遺言を作成するには、公証人との事前打ち合わせが必要です。通常、行政書士などの専門家がご依頼を受け、遺言者のお話しを伺って遺言書の文案を作成し、行政書士が公証人と文案についての確認をした上で、公証役場の予約を取って、当日公証人と遺言者、証人2名立ち合いのもと、公正証書遺言書を作成します。
作成された遺言書の原本は公証役場に保管されます。

ところで、同性カップルの場合、必要なのは遺言書だけではありません。
パートナーが重篤な状況になりICUに入った時に親族でなければ入れて貰えない、相手が深刻な病になった時、説明を受けられないという事を回避するために、また相手が認知症を発症した時等に財産管理をパートナーが行えるようにする為に、必要なものがあります。
それは「医療上の同意を含むパートナーシップ合意契約」や「任意後見契約」です。こちらも公証役場での作成事になります。これがあれば万全とは残念ながらならない場合もありますが、備えておくべきものである事は確かです。

とにかく、一日も早く同性婚が認められる国になって欲しいと私は思っていますが、現状ではお伝えしたような書類の作成を作る事が、お互いを護る最善策となります。

お二人が安心してこれからも一緒に歩んでいけるように、遺言書と契約書の作成を考えてみてください。当事務所では遠方の方から、オンラインを利用したご相談も受けています。
行政書士には守秘義務がありますので、安心していつでもご相談ください。

このサイトをフォローする!