「甥・姪」と相続
厚労省の研究機関が2019年に発表したデータによると、日本人の生涯未婚率は男性23.37%、女性14.06%だそうです。これは2015年の国勢調査による数字ですので、2022年の現在、未婚率は更に増えていると思われます。
何故この話しから始めたかというと、「甥・姪」の相続の発生と、生涯未婚率は密接な関係にあるからです。
このブログでは「子」「孫」の相続を取り上げてきましたが、今回は「甥・姪」の相続のお話しです。
何故かというと、今後、甥・姪が相続人となる場合が増えてくると予想されるからです。実際私も叔父の死後手続きを行った経験があります。
それでは、「甥・姪」が法定相続人となるのはどのような場合なのか、整理しましょう。
民法上、次の条件を全て満たせば、「甥・姪」は相続人となります。
- 故人が独身だった
- 故人に子供が居ない(嫡出子、認知された非嫡出子が子に該当します)
- 故人の祖父母、両親が既に他界している
- 故人に兄弟姉妹が居たが既に亡くなっており、その亡くなった兄弟姉妹に子供がいた(代襲相続)
例えば、あなたは2人姉妹で、独身の叔母が居たとします。彼女も二人姉妹で、生涯独身で子供もいませんでした。あなたにとっての祖父母は他界しており、叔母の姉であるあなたの母親も亡くなっているので、親族と言えるのは、あなたと妹の2人でした。このような場合、相続人はあなたと妹、つまり姪2人になります。(これがもし、親世代が3人姉妹で三女の叔母は存命中の場合、相続人は叔母とあなた方姉妹2人になりますが、分配としては三女の叔母1/2、姪二人は一人1/4となります。)
と、この場合相続人は姪2人、しかも姉妹なので話しは比較的シンプルなのですが、亡くなった叔母の兄弟姉妹が3人以上で、その子の世代が大勢いる(あなたにとってのいとこ)、となってくるとなかなか話は厄介になってきます。
遺言書がない場合、叔母の兄弟姉妹、その兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子である姪、甥が全員集まって話し合いをしなければなりません。遺産分割協議です。兄弟姉妹同士ならまだ連絡先は分かると思いますが、いとこ同士となると、全員の連絡先を知らない人は結構いるのではないでしょうか。
また、叔父叔母の全財産を把握している人はいるでしょうか?まず居ませんよね。言うまでもなく、遺産にはプラスの財産だけでなく、負の財産も含まれます。叔母がもし借金をしていたら、それも相続財産になります。相続人は「包括承継人」ですので、例えば叔母さんが連帯保証人になっていたら、その地位も相続の対象となります。親の全財産と保証債務等を把握する事すら難しいのに、叔父叔母の事を把握している人ってまず居ないですよね。という訳で、相続人となった甥姪は大変な仕事を抱え込む事になります。
とにかくまずは、遺産の調査です。一番に探すべきは遺言書(探し方はこちら)ですが、通帳、証書等の書類を探します。郵便物に督促状等が無いかなどもチェックします。言うまでもなく、人の家での探し物は勝手が分からず大変です。
調査の結果、もし負の遺産が大きければ、相続放棄を行えますが、それは「自己の為に相続の開始があった事を知った時から3か月」です。急いで調査を行い、3か月以内に家庭裁判所に申立てなければなりません。正直時間はありません。
財産調査と同時進行で、故人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せて法定相続人の特定もしておきましょう。これにより、法定相続人が変わってくる事があります。もし「子」が存在していれば、子が相続放棄をしない限り「子」が全て相続する事になります。(相続放棄の話しはまた後日)
法定相続人が確定し、その中に子が含まれていなければ、祖父母両親、兄弟姉妹が全員他界しており、兄弟姉妹の子もあなた以外居ないという場合以外は、相続人が一人というパターンは消えますので、遺言書が無い限り該当者が全員集まって遺産分割協議を行います。
以上大まかな説明でしたが、大変な作業になる事はお分かり頂けたと思います。(相続手続き以外の手続きはこちら)
という訳で、ご両親のご兄弟姉妹に独身の方がいらっしゃる場合、難しいとは思いますが、折を見て遺言書の作成をそれとなく話してみるのはいかがでしょうか。もちろん、財産目録の作成をお願いする事もお忘れなく。
また、ご自身が独身の方の場合は、このブログをきっかけに、相続人の事を考えて遺言書、財産目録の作成や死後事務手続きの事を考えてみる事をお薦めします。
そして困った時には、いつでも行政書士にご相談ください。