相続が大変になるケースとは

日本では、生涯未婚率が増え続けています。そして、離婚率は約35.5パーセントという統計があります。2050年には日本の人口の半分が独身になると言われています。
一方の再婚率は26.7%だそうですので、異母兄弟姉妹、異父兄弟姉妹がいる方は増えていると思います。
家族の形が変わっていく中で、相続も当然ながら変わって来ています。
前回NHKあさイチの「相続トラブル」の放送の後、「負の相続の調べ方」について取り上げました。
今回もその「相続トラブル」から派生して「相続手続が大変になるケース」を考えます。

相続というと、「親が亡くなったらおこるもの」と思う方がほとんどだと思いますが、独身者の増加に伴い「思わぬ相続」も増えています。相続が起こってから慌てる前に、どういう事が起こりうるのかを知っておくのは大切です。それでは、個別に考えてみましょう。

独身の兄弟姉妹がいる
●独身の叔父叔母がいる
●異母兄弟姉妹、異父兄弟姉妹がいる
●負債を抱える親、兄弟姉妹、叔父叔母がいる
●再婚した両親の子で、片親との血の繋がりはない
●相続人の中に海外在住の人がいる

【独身の兄弟姉妹がいる】
亡くなられた時に、ご両親がご存命ならご両親が相続人となりますが、お二人とも亡くなられていたら兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹の場合、相手の資産の詳細を知っている方はほぼいないと思います。亡くなられた方が、持ち家だけでなく売れない不動産やリゾート会員権などを持っていて困るというケースもあります。また、負債を抱えられている場合も当然の事ながらありますので注意が必要です。

 ◆大変になる理由◆
① 遺産の把握(不動産、預貯金、株、会員権各種、借金など)が難しい
② 戸籍の取寄せが通常よりも多くなる
・ご両親の出生から死亡までの全戸籍(兄弟姉妹の確認の為)も必要になる

【独身の叔父叔母がいる】
亡くなられた時に、亡くなられた方のご両親、兄弟姉妹が亡くなられていたら甥姪が相続人となります。
兄弟姉妹に存命の方と亡くなられた方が混在している場合、ご存命の兄弟姉妹と亡くなられた兄弟姉妹の子である甥姪が代襲相続する事になります。

 ◆大変になる理由◆
① 全資産の把握(不動産、預貯金、株、借金など)が難しい
② 戸籍の取寄せが通常よりも多くなる
・亡くなられた方のご両親の出生から死亡までの全戸籍(兄弟姉妹の確認の為)も必要になる
・亡くなられた方の兄弟姉妹で先に亡くなられた方の出生から死亡までの全戸籍(甥姪の確認の為)も必要になる

【異母兄弟姉妹、異父兄弟姉妹がいる】
再婚されている方の場合、前婚の時の子も当然に相続人ですので、異父母兄弟姉妹間で交流がない場合にはその方に連絡を取り話し合う事のハードルは高くなります。また、認知した子がいる場合も当然に相続人です。相続分も実子と同じです。

 ◆大変になる理由◆
・相続人の連絡先が分からない場合がある
・相続人全員で行わなければ無効である遺産分割についての話し合いが難しい

【負債を抱える親、兄弟姉妹、叔父叔母がいる】
相続人になると、負の財産も当然に相続します。借金が多い場合、相続人の誰かが「相続放棄」をすると、次の順位の相続人に相続がやってきます。言葉は良くないかもしれませんが「巻き込まれた」と思うケースは次のような場合でしょう。

・子供の頃に両親が離婚して疎遠になっていた親が亡くなり、借金が残された
・兄弟姉妹が亡くなり、子が相続すると思っていたら相続放棄をしたので、兄弟姉妹が相続人となった
・独身の叔父叔母が亡くなり、甥姪が相続人となった

2023年の相続放棄の数は28万2785件と過去最多となっています。亡くなられた当初、自分は相続人ではなかったのにいつの間にか相続人になっていた、という事は起こりえます。
他人事ではないと覚えておいてください。

【再婚した両親の子で、片親との血の繋がりはない】
ご両親が再婚した方で、例えば母親の実子ではあるけれど父親との血の繋がりはなかったとします。この場合、その子と父親は血縁関係にはないので、子に相続権はありません。
相続手続が大変というより、そもそも相続が発生していないケースとなります。
子が相続権を得るには、父との養子縁組が必要になります。
遺言書に「養子縁組する」と書かれても、養子縁組は成立しませんので注意してください。

【相続人の中に海外在住の人がいる】
今の日本では、国際結婚も増えて来ていますし、海外に住まわれている方も多いと思います。
例えば、親御さんが亡くなられた場合日本の法律に則って相続手続を行う事になります。印鑑証明書、戸籍謄本、住民票といった書類の提出を求められる訳です。遺産分割協議書も必要になります。
詳細はこちらをお読み頂ければと思いますが、通常市区役所で入手できる書類が領事館に行く事になったり、帰国時に公証役場に行く事になったりと色々と大変になります。
また、国際結婚をしたお子さんが亡くなり外国籍のお孫さんが相続人になっている場合もあります。
例えば、アメリカの場合は戸籍制度がありませんので宣誓供述書を提出する事になります。
遺産分割協議を行うのにも言葉の壁があります。通常の相続手続の何倍も大変になる可能性があります。
出来るだけ手続きを簡略化するのは、生前に遺言書の作成をしておく事。これしかありません。

というように、家族の形の変化により相続も複雑化していきます。
戸籍の取得については、直系(両親、祖父母、子)であれば今年3月から「戸籍の広域交付」が始まりましたので、一つの役所で全ての戸籍を取得する事が出来ますが、兄弟姉妹、叔父叔母となると従来通り、一つ戸籍を取寄せ、その前の戸籍を辿り、といくつもの役所に問い合わせ取得していくしかありません。

どのケースも相続手続が大変になります。ではどうすれば手続きが軽減されるのか。それにはこれしかありません。

・財産リスト(負債、保証人なっている等も含む)の作成
・遺言書の作成

残念ながら遺族に出来る事は、これらの書類を作って欲しいと頼む事だけです。そして作成した書類は、ご家族に渡しておくか、見つけて貰えるようにしておく必要があります。財産リストについては、メモ書きのようなものでも、随分ご家族は助かると思います。自筆証書遺言書は、NHKあさイチでは紹介していませんでしたが、現在法務局での保管制度があり、亡くなられたら相続人に遺言書を保管しています、と連絡して貰えます。(詳細はこちらをお読みください)
最近ではネットバンキング等を使われている場合もありますし、暗号資産をお持ちの方もいらっしゃいます。通帳や郵便物が届いて分かるという事はなくなっていますので、ぜひ書き残してください。

そして、血のつながらないお子さんがいらっしゃる場合、相続をさせたいと思うなら養子縁組をしてください。

その他、家族の形の変化に起因するものではないので今回取り上げませんでしたが、複数の不動産が相続財産に含まれている場合も大変な相続になると思います。売却可能な資産であれば問題はありませんが、売れない負動産も残念ながら多く存在しています。不動産の管理、固定資産税などに当然の事ながら費用が発生します。
お元気なうちに売却を考えられるか、せめてその不動産の登記簿や権利証等の書類をまとめておかれる事をおすすめします。

相続は、正直大仕事です。時間も労力もかかります。行政書士は、相続人の特定書類の作成、それに伴う戸籍謄本の取寄せ、遺産分割協議書、遺言書の作成等を行っています。
いつでもご相談ください。

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