遺言書を書いてくれない場合には

お正月に親戚と会われた方も多いと思います。当事務所のある地域でも、お正月には遠方のナンバープレートの車を良くみかけました。

お正月は親御さんと久しぶりにゆっくり話せる良い機会ですが、なかなか将来の事を話したくても話せない方は多いと思いのではないでしょうか。
当ブログでは「遺言書作成をお薦めします」と幾度となく書いていますが、親御さんに「遺言書を書いて」とはなかなか言い出せないと思いますし、言ったところで「必要ない」という方も多いと思います。

  • 自分の死について考えたくない
  • 自分の親が亡くなった時には遺言書なんてなくても困らなかった
  • 遺産というほどの財産はないから関係ない
  • 考えるのが面倒くさい
  • 家族は仲が良いから任せて大丈夫

と思っている人が多いのが、日本に遺言書が根付かない理由だと思います。
ところが、実際に相続が始まるとそんなに簡単には事が運びません。

金額の多い少ないにかかわらず、相続手続には誰が相続人なのかを証明する書類、相続人全員が納得して分配を決めた事が分かる書類の提出を求められます。親御さんが相続された時と比べると、金融機関は相続トラブルに巻き込まれないようにルールの明確化を行っています。額に関係なく相続手続のルールに従い手続きをする事になっています。(少額の場合に手続きが簡易になるのはゆうちょ銀行ぐらいだと思います)

ご本人が分配を考えるのが面倒だというなら、ご本人以外の人が全財産を把握して分配を決めていくのは正直もっと大変です。持ち主が決めた分配なら納得出来る事でも、相続人間で決めた分配には納得がいかないという事も往々にしてあります。相続の揉め事は、昔よりも今の方が増加傾向にあります。

相続人の話し合いによる分配を回避するのは「遺言書作成」が一番の良案なのですが、書いてくれない親が多い。ではどうするか。遺言書を書いてもらえない場合、現段階で皆さんが出来る事を考えてみたいと思います。

  • 実家の登記簿謄本を取り寄せて名義を確認する
  • 戸籍の広域交付制度を利用して親御さんの全戸籍を取得する
  • 株やNISAをしているか聞いてみる。取得していればどこの証券会社かを聞いておく
  • リゾート会員権、ゴルフ会員権など持っていた記憶があれば、売却したのか今も持っているのか聞いてみる

【登記簿の取寄せ】
登記簿(全部事項証明書)は誰でも入手出来ます。権利部(甲区)にある「権利者その他の事項」を見るとその権利者が分かります。もしその名前が、実際に住んでいる親御さんのお名前でない場合は所有者が別にいる、もしくは「相続登記が未完になっている」という事になります。

2024年4月1日から相続登記は義務化されましたので必ず相続登記をしなければなりません。

相続登記の義務化はまだ余りピンと来ていない人が多いので、法律改正があった事を話しながら、相続登記手続きをしないとね、とご提案される事をおすすめします。そして、その手続きが大変だとご本人が思われたら、遺言書を作成してくれるかもしれません。相続登記の義務化数次相続についてはこちら)

【全戸籍の取得】
親御さんの全戸籍を確認するのは、相続人の確定の為です。再婚されていて異母または異父兄弟姉妹がいる、認知されたお子さんがいる場合は、当然その方達も相続人になります。亡くなられた時にはその方達も遺産分割協議に参加しなければ、遺産分割協議は無効となります。
直系(親子)であれば、最寄りの市区役所窓口で広域交付をして貰えます。親御さんの全戸籍はお子さんご自身が単独で申請、取得する事が出来ます。民法の知識は必要になりますが、戸籍を確認すれば相続人を確認する事が出来ます。
相続手続は、相続人の確定なしには開始する事が出来ません。広域交付についてはこちら

【証券会社の把握】
どんな銘柄の株式を所有しているのか、投資信託、NISAなどどんな商品を所有しているのか
は、相続発生時に証券会社に問い合わせれば分かりますので、とにかく取引をしている会社を知っておくと相続手続がスムーズに行えます。

【各種会員権の把握】
今の70~80代の方はバブル期にゴルフ会員権やリゾート会員権を買われた方が多くいらっしゃいます。既に会員権を処分している方も多いと思いますが、売るに売れない、買い手が無い会員権をお持ちの方もまた多くいらっしゃいます。相続前に、会員権購入時の契約書等を見つけておくと、後々手続きがスムーズに行えます。不動産所有権付きリゾート会員権についてはこちら)

相続時、手続きに苦労する事が予想されるのは、再婚されて前婚時のお子さんがいらっしゃる方、認知したお子さんがいらっしゃる方、先祖代々の家に住まわれている方、相続人に海外在住者がいらっしゃる方などです。
先祖代々の家に住まわれている場合は、相続登記がされずに今に至るお家も珍しくありません。その場合はまず相続登記を行う事が必須となります。

行政書士は代理人にはなれませんが、「事実証明に関する書類」の作成と相談をお受けする事が出来ます
取得された戸籍を読み解く、不動産登記を取り寄せる事は出来ます。また、相続登記を行う上で必要になる相続人調査、遺産分割協議書の作成も行っています。

いつでもご相談ください。

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