遺言執行者とは
皆さんは「遺言執行者」という言葉を聞かれた事はありますか?遺言書を作成する人が少ない日本ではまだ余り馴染みのない言葉かもしれません。
遺言執行者とは「遺言書の内容を実現させるため、相続財産の管理その他の遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を負う人」の事です。
ご家族が亡くなられて、「遺言執行者として●●●●(例えば配偶者)を指定する」と書かれた遺言書が残されたら、分かりやすく言えばその人が相続手続をする代表者、責任者となります。
とはいえ、指定された人が現役世代で忙しいという事もあります。慣れない手続きを行う事が難しいと感じる方もいらっしゃるでしょう。民法では「遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる」と定めていますので、遺言執行者に指名された人は私たち行政書士のような士業に実際の手続きを依頼する事が出来ます。また、最初から士業を遺言執行者として指定する事も多いです。
遺言執行者が指定されていれば、相続手続は執行者が単独で行う事が出来ます。
遺言書で遺言執行者を指定するかどうかは遺言者の意思に基づきますが、遺言書の内容によっては遺言執行者を選任しなければならない場合があります。
【遺言執行者が必要なケース】
① 遺言書で「非嫡出子の認知」を行う場合
➁ 遺言書で「相続排除」を行う場合
①は婚姻関係にない方との間に生まれた子(非嫡出子)を認知する事です。遺言書で認知する事が可能です。
➁は遺言書を書いた人が「この相続人には遺産を相続させない」と考え、相続人から廃除する事です。遺言書で相続権のはく奪をする事になります。
遺言者に対して相続人が「①虐待をした➁重大な屈辱を加えた③その他の著しい非行があった」場合に相続排除の要件を満たす事になります。
この非嫡出子の認知と相続排除を遺言書に記す場合は、遺言執行者が必ず必要となります。遺言書に指定が無い場合は、家庭裁判所に申し立てて選任してもらわなければなりません。遺言執行者の選任方法は、遺言者が遺言書で指定するか、遺言者の死後、家庭裁判所に申立てをして選任してもらうかの二択となります。
【遺言執行者の指定をした方が良いケース】
- 相続人の中に認知症の方が居る
- 相続人の中に海外在住者が居る
- 相続人の中に外国籍の方が居る
- 相続人の中に非協力的な人が居る
- 相続人以外の人に遺贈をする など
遺言執行者は単独で相続手続が行えます。逆に言うと、遺言執行者がいない場合、相続人全員の協力なしには相続手続が行えません。認知症の方、海外在住の方等全員の協力が困難である事が予想される場合には遺言執行者を選任し、遺言執行者が単独で手続きを行えるようにしておくのです。
上記のケースの場合、「した方が良い」というより実務上は「必要」と言えます。
ところで「相続人以外」についての補足ですが、「孫」「甥姪」はその方達の親がご存命であれば法定相続人ではありません。この場合、この方達に遺産を渡したい場合は「遺贈」となります。
【遺言執行者になれない人】
「未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。」民法第1009条
つまり、破産者でない成人であれば、だれでも遺言執行者になれます。とはいえ、遺言者の親族、士業等が一般的です。
因みに相続人の一人を遺言執行者に指定する場合は無償とする場合が多いかと思いますが、士業に依頼する場合の報酬は遺産相続の1~3%が相場と言われています。
遺言書を書く場合、法定相続人の特定をし、相続人の状態を考慮した上で内容を決める必要があります。
遺言書は様々な事を考慮して、法的に有効なものを作成してこそ意味があります。いつでもご相談ください。