保険金と相続について
今年も早いもので、残すところ1か月と少しとなりました。保険に加入されている方は、今年の「保険料払い込み証明書」はもう届いた事と思います。
さて、今回はその「保険」を取り上げてみたいと思います。
ほとんどの方は、何らかの保険に加入されていると思います。そして死亡時の保険金の受取人は家族というのが一般的だと思います。
遺言書には資産とその分配について書きますが、生命保険等の保険金については書きません。何故なら、保険金は受取人のものだからです。
(保険金の受取人を遺言書で変更する事は可能ですが、確実に変更したい場合には被保険者がご存命中に変更手続きをするに越したことはありません)
では、相続発生時における保険金の受領について注意すべき点を具体的にあげてみましょう。
【その1】
母親が亡くなり保険金が支払われる事になった。母親は死亡保険金250万円の受取人を長男としていたが、妹との話し合いの結果、妹が250万円を貰う事になった。
このケースは良くある事かと思います。ここで問題になるのは、保険料の受取人が長男である点と、保険金が250万円である事です。
<長男から妹に保険金250万円を渡した場合、贈与税が発生する>
保険金はあくまでも受取人のものです。家族間でも金銭を渡す事は「贈与」となります。つまり「贈与税」の対象となるのです。
250万円の保険金を妹(18歳以上)に渡した場合に発生する贈与税は次の通りです。
250万-110万(暦年課税の基礎控除額)×15%-10万円=11万円
という訳で、妹が貰えるのは実質239万円となります。贈与税がかからないようにするには、暦年課税基礎控除額110万円以内の額を、数年に分けて贈与するという方法をとる事になります。
因みに、保険金が110万円以内であれば、贈与税は生じません。
1年目に110万円。2年目に100万円。3年目に40万円と3回に分けて兄から妹に贈与すれば、毎年基礎控除内なので贈与税は課税されません。
【その2】
A子さんは20代の頃に養老保険に加入。受取人は母親としていた。その後、結婚したが、受取人を夫や子に変更するのを忘れており、母親が他界した後もそのままにしていた。
その後、A子さんは養老保険の満期前に他界。死亡保険金がもらえる事になったが、受取人は母親のままになっていた。
簡単に言えば、「受取人が死亡していた」というケースです。この場合、どうなるのかというと「受取人の相続人が受取人」になります。
つまり、A子さんのお母さんの相続人が受取人です。A子さんのお父さんがご存命であればお父さんとA子さんの兄弟姉妹が受取人。お父さんが亡くなっていたら兄弟姉妹が受取人。A子さんが一人っ子だったとしたら、A子さんのお母さんの兄弟姉妹が受取人。A子さんの叔父叔母が他界していたら、A子さんの従妹が保険金の受取人です。
残念ながら夫にも、子供にも保険金は支払われません。
何故なら、A子さんの死亡保険金はA子さんのものではなく、受取人(母親)のものだからです。
という訳で、保険金の受取人は、家族構成が変化した場合には必ず確認する必要があります。
また、遺言書作成を考えられる時には、保険金の受取人についても併せて考える事をおすすめします。