実家の相続 ①空き家の管理

総務省の調査によると、2023年10月時点で日本全国の空き家件数は住宅全体の13.8%にあたる900万戸となったそうです。5年前の調査から51万戸増加し、過去最高となりました。

高齢化に伴い、今後もますます空き家は増えてくると思います。
当事務所のあるエリアでも、空き家が増えてきました。空き家になる原因は様々だと思いますが、考えられるのは次のようなケースです。

【空き家の原因】
①高齢の居住者が入院又は施設に入り、空き家になっている
➁相続人全員の同意が得られず売却が出来ない
③家を売却したいが、買い手がない
④古い建物で、所有者が良く分からず放置されている

①については、家の売却は所有者でないと出来ませんので、相続財産となるまで空き家の状態は続きます。(後見人制度を利用すれば売却は出来ます。詳細はこちら
➁は、相続人の中に売却に反対している人が居る、認知症等で話し合いが出来ない方が居る、もしくは相続人の中に連絡が取れない人がいるというパターンが考えられます。
③は最近増えて来ていると思います。人口減少、建築費用の増額に加え、住宅ローンの金利引き上げもありますので、ますます買い手がいないという事は増えていくと思います。

最後の④は、ワイドショーなどでも時々取り上げられていますが、昔に建てられた家で倒壊の危険があるが持ち主が分からず、近隣住民からの依頼により行政が動いている、というような空き家です。

高齢化に伴い、今後ますます「実家」を相続する方が増えてくると思うので、今回は「実家の相続」について考えてみたいと思います。

親御さんがご存命でも亡くなられていても、ご家族は家を管理しなければなりません。次の支出が発生します。

【空き家の管理にかかる費用】
・固定資産税
・公共料金
・植木の剪定    など

雑草や植木のメンテは見落とされがちですが、手入れをしないとあっという間に家の境界を越えて枝が伸び、時には家の前の歩道をふさぎます。平均的な剪定費用は1回3万円程度のようですが、植木の数、敷地の広さ、樹木の種類、成長具合等によって違ってきます。剪定は年1回から2回行います。
また昨今、空き家に蜂の巣が出来る事も多いようです。その場合、自治会や役所からご家族に連絡が入り、蜂を駆除をする必要が出て来ます。こちらも、巣のできた場所等によって費用が違ってきます。
公共料金の支払いは、空き家なら止めていても良いと考えられるかもしれませんが、実家に片付け等で訪れた際、水道や電気が使えないというのは大変ですので、よくお考えください。

【その他の注意点】
・近隣住民に連絡先をお知らせしておく
・空き巣対策を考える

先に述べたように空き家の植木の枝や雑草が道をふさいでしまっている等の問題が生じた際、誰に連絡すれば良いのか分からないという事がよく問題になります。近隣の方にはご挨拶と連絡先のお知らせはしておいてください。

また、空き巣に入られるといった事も起こりえます。私は、風呂場の窓から空き巣に入られた空き家を実際に見た事があります。そのような事が起こった時、最初に異変に気づくのは近隣の方達です。連絡先を伝えていれば連絡を貰う事が出来ますので、ぜひ近隣の方と繋がっておいてください。

空き家の管理は、なかなか大変だと思います。家は人が住まないと傷むのが早くなりますし、雑草も植木も茂り放題になります。定期的に通って空気の入れ替えをしないと、カビも発生します。
昭和に建てられた家の木は、成長を続け、家の屋根を超えるほどになっているものも見受けられます。屋根を超える高さになった木を、倒壊の危険性があるからと伐採したのを見た事がありますが、クレーン車が必要になっていました。

植木の剪定は、業者に頼むよりも安価な、ご実家のある地域の「シルバー人材派遣センター」等に依頼するというのも一つの方法だと思いますが、今はどこも人手不足で引き受けてもらえないという話しも聞きます。植木や雑草に悩まれている方は多いのではないでしょうか。
民法では、人の家の植木の枝は勝手に切れないと定められており、必ず所有者に連絡をしなければなりません。(詳細はこちらをお読みください)近隣住民との関係を良好に保つ為にも、庭木の剪定は定期的に行う事をおすすめします。

また、空き家のメンテナンスを行わず、倒壊の恐れがあるような問題のある物件になり「特定空き家」や「管理不全空き家」に行政から指定されると、固定資産税が増額されます。
放置を続けると、固定資産税が6倍になる可能性があります。また、所有者には工作物責任がありますから、近隣住民等から倒木や家の倒壊について危険性があり、対応をして欲しいと言われているのに放置しているうちに他人に損害が生じた時には、賠償責任があります。空き家は放置せず、管理を継続する必要があります。

という訳で、空き家の管理には、費用と手間がかかります。相続財産となった実家は放置せず、どうするのかを早目に考える事をおすすめします。

それでは、「➁実家の売却の準備」に続きます。

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