相続不動産と固定資産税
不動産を持っていると毎年4月~5月頃、不動産所在地の地方自治体から「固定資産税納税通知書」が届きます。
あなたの親御さんが亡くなり、不動産を相続する事になった場合、当然の事ながら固定資産税納付義務も相続する事になります。
いざ相続してみると、所有していた不動産はご実家だけではなく、バブル期に買った土地や、不動産所有権付きリゾート会員権(詳細はこちら)などもあったという事が判明する場合があります。また、先祖代々の土地として、雑木林等を受け継いでいる事もあります。不動産を複数相続したとしたら、総額は結構な額になってくる可能性があります。
相続登記をしなければ、納付義務はないのではないかと思うかもしれませんが、それは間違いです。登記はしていなくても、相続はしています。固定資産税は「相続人全員の連帯債務」となります。
●固定資産税は連帯債務
例えば、相続人が2人居て固定資産税が10万円だったとしましょう。役所は一人の相続人に対して10万円を払ってくださいと連絡してきます。「相続人は2人居るので5万円ずつ請求してください」と言ったところで、それは叶いません。連帯債務は各自全額支払う義務があり、払った人は払ってない人に払ってくれという求償権を持ちます。一人が代表して支払い、払った人が自分で他の人から回収する事になります。
例の場合、Aが10万円を払い、AがBに5万円の支払いを求める(求償する)事になります。
実家を相続して、相続の話し合いがつかず長期化しているうちに、固定資産税の納税通知書が来たとします。話し合いはついていないからとそのまま放置した場合、どうなるのでしょうか。
●納付期限を過ぎると延滞金が課せられる
固定資産税には「延滞金」が課されます。期限後1か月経過までで2.5%、納付期限1か月経過後には9%程度(自治体によって異なる)の延滞金が加算されます。という訳で、放置できません。出来るだけ早く納付するのが賢明です。
固定資産税を滞納し続けた場合、次のような流れになります。
①督促状の送付
➁納税の催告
③財産調査
④差押え
⑤差押えたものが不動産の場合公売後に徴収
納付期限を過ぎると、20日以内に督促状が送付されます。納付しない場合、電話等で催告が行われます。それでも納付しなければ、次に進みます。
●財産調査と差押え
税金の滞納処分における財務調査は「国税徴収法」により定められており、納付義務者の就業先、預貯金口座などを役所は調査する事が出来ます。本人に調査開始の連絡は当然の事ながらありません。そして、資産が明らかになったら差押えに入ります。
不動産は現金化が大変ですので、働いている方、預貯金がある方の場合は、まず給与や預貯金が差し押さえられ、そこから徴収されます。預貯金の場合、銀行口座から強制徴収されその後連絡が来ます。
給与も貯金もなく不動産しかない、という事になると不動産や高額動産、会員権等が差し押さえられ、公売にかけますが、役所としては手間がかかりますので、基本的に差押えは預貯金等金銭があればそちらを差し押さえます。
●固定資産税の免除はない
固定資産税には、免税措置はありません。借金は自己破産すれば返済義務が無くなりますが、税金は自己破産をしても完納するまで免除(免責)されません。つまり、相続した不動産の固定資産税の納付からは逃れることは出来ないのです。
納税義務を負わない方法はただ一つ。相続せずに、相続放棄をする事ですが、相続財産の全体を把握した上でなければ決断できるものではありませんし、相続放棄には期限があります。(相続放棄についてはこちらを、不動産についての詳細はこちらをお読みください)
●不動産によっては固定資産税が最高6倍になる可能性がある
相続した不動産の状態が悪く、倒壊の恐れがあるような場合、役所から「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定される場合があります。その場合、固定資産税の減額措置が解除され、固定資産税が最大6倍になる可能性があります。倒壊の危険性があり解体する必要がある場合、解体費用がかかりますし、放置したとしても、役所が強制執行した後に、解体費用を請求されます。
という訳で、相続した家の状態が悪い場合には、多額の支払いが生じる可能性が高いです。
相続が開始したら先延ばしにせず、手続きを進めてください。
①遺言書の有無を確認(無ければ法定相続分の相続が発生)
➁相続不動産確認の為、固定資産税納税通知書を探す
※必要があれば、不動産所在地の役所で名寄帳を確認(固定資産税対象外の不動産の確認)
③不動産の登記簿を取寄せ、名義人を確認
④名義人の相続人を確認
⑤相続財産全体の調査を行い、相続するか放棄するかを考える(相続発生を知ってから3か月以内)
⑥相続人全員で出来るだけ早く遺産分割協議を行う
「固定資産税納税通知書」が届いたら、期限までにお支払いください。
そして、相続財産や相続人の調査等はいつでもご相談ください。