相続が発生する前にすべき事とは?
相続手続きをするのは通常一生のうち1、2回だと思います。初めて手続きをする人はいざとりかかってみるとこんなにも手続きが多いのかと驚かれるのではないでしょうか。私が実際そうでした。
人が亡くなると葬儀を行い、納骨、法要など色々しなければならない事があります。公共料金、健康保険、年金を止める、携帯電話やクレジットカードの解約等の諸手続きもあります。そこに相続手続きも入ってきますので、しばらくは日々追われるという状況になります。相続手続き自体に期限はありませんが、相続税の納付期限は亡くなられた事を知った日の翌日から10か月ですのでそれまでに相続資産の調査を行わなければなりません。「小規模宅地等の特例」と「配偶者の税額軽減」の適応を受けたい場合も相続があったことを知った日から10か月以内に申告する必要があります。税金は待ってはくれないのです。
という訳で、今回は相続準備のお話しです。
これが揃っていれば相続手続きはスムーズに進められます。
①遺言書
➁被相続人が生まれてから現在に至る戸籍謄本
③相続人関係説明図
④財産目録
⑤相続人全員の実印作成と印鑑登録
遺言書を書く事は被相続人しかできない事ですが、それ以外は事前に用意することができます。
戸籍謄本ですが、戸籍謄本が無ければ③の相続人関係説明図は作れません。そして相続人の把握はとても重要なポイントです。何故なら、遺産分割協議は相続人全員で行わないと法的に無効だからです。戸籍を取り寄せなくても誰が相続人か分かっていると思う方は多いと思いますが、相続発生時にはそれを証明する書類が必要になります。また、戸籍を取り寄せてみたら意外な事実が判明する事もないとは言えませんので、戸籍は出生から現在までの全てを取り寄せなくてはなりません。
あなたが被相続人の子であれば戸籍謄本は単独で入手できます。指定の書類や定額小為替を用意する必要はありますが、役所の窓口に行かずとも郵送してもらえます。方法については市役所のホームページを確認した上で、電話で問い合わせてみてください。通常戸籍は1通では終わらないので電話で担当者といくら定額小為替証書を送付するのか確認する事をお薦めします。
④は被相続人の財産のリストアップです。
一番良いのは、ご本人にリスト作りをお願いする事だと思いますが、それは難しいという場合もあると思います。その場合はとりあえず分かる範囲で情報収集してみてください。特に、誰かの保証人になっていないか、借金はないかという事は聞きにくいと思いますが、重要なポイントになりますので出来るだけ聞いておくことをおすすめします。
不動産がある場合、その不動産の登記簿謄本を入手します。登記簿謄本は法務局から取得します。登記簿謄本は誰でも取得する事が出来るのですが、土地なら「地番」建物なら「家屋番号」を知らなければ取得できません。(登記簿謄本の取り寄せ方法は、こちらをご覧ください)
登記簿謄本を確認すれば、その不動産に抵当権が設定されているか否かが分かりますし、相続登記にも必要になります。また、その家の面積を把握していれば、先に書いた「小規模宅地等の特例」の適応を受けられるかどうかも分かります。
因みに、この特例は「故人が自宅として使っていた土地は、配偶者か、同居していた親族が相続すると8割引きの評価額で相続税を計算しても良い」というものです。「小規模宅地」とは100坪(330㎡)までの土地とされています。(相続税の詳細については税理士までお問い合わせください)
また、市(区)役所から毎年4月~5月頃に送られてくる「固定資産税・都市計画税 納税通知書」も最新のものを保管しておきましょう。固定資産税の払い込み用紙と一緒に送られてくるものです。相続税、相続登記等で必要になります。入手出来なければ、相続が発生した時に「固定資産評価証明書」を役所から取得する事になります。
預貯金については通帳のコピーをとります。こちらはご本人の了解がなくては難しいでしょう。了解が得られたら通帳のコピーは口座の名義人、口座番号が表記されているページをコピーしておきます。変動の可能性はありますが預金残高のチェックもお忘れなく。
また、株、ゴルフ会員権、リゾート会員権なども勿論資産です。何を持たれているか聞いておく事をおすすめします。株の場合はどの証券会社を使っているかもお忘れなく。会員権については、契約書が後々役立ちます。契約書も確認しておく事をお薦めします。(リゾート会員権については後日またお話しします)
⑤の実印と印鑑登録は、相続手続きの色々な場面で必要になります。
実印はネット通販で安価に、そして簡単に作成する事が出来ます。印鑑登録は、本人が実印と顔写真付証明書(運転免許書やマイナンバーカード、パスポート等)をもって役所に行けば、即日登録完了です。時間のある時に作成しておく事をおすすめします。
という訳で色々と書きましたが、まずすべき事とは
①戸籍謄本を取り寄せ、相続人を特定する
➁相続人が実印を持っていなければ作成し、印鑑登録をする
③不動産があれば、登記簿謄本を取り寄せる
④不動産があれば、最新の「固定資産税・都市計画税 納税通知書」を保管しておく
これだけでも相続手続きは随分スムーズになります。
遺言書が無く、相続人で話し合う事になった場合、誰が該当者か最初から分かっているのと分かってないのとでは全く違います。
相続手続きの準備なんて、亡くなるのを待っているみたいで嫌だと思われるかもしれませんが、一度自分の家の家系図を作ってみる感覚で書類を取り寄せてみるのはいかがでしょうか。
とはいえ、相続手続きに必要な「改製原戸籍」は手書きの場合が多く読みづらい上に表記の仕方が分かりにくいものです。また、法定相続人の特定には民法の知識が必要です。相続人関係説明図用の戸籍謄本を取り寄せる時間は無いし、面倒だし民法もよく分からないという方は、行政書士に頼むというのも一つの方法です。
相続手続きが円滑に進められる事は精神的にも経済的にも大事な事です。このブログが少しでもその助けになれれば幸いです。