相続が争族にならないために
8月も終盤となりました。お盆を過ぎても毎日暑いですね。今年のお盆は帰省された方も多かったかと思います。
さて、親族が会われた後にと言っては何ですが、本日は相続のお話しです。
皆さんは「相続でもめた」という話しを聞かれた事はないでしょうか。私は、この仕事に就く前から相続時のトラブルの話しを周囲の人から時々聞いていました。ドラマや映画でも相続問題は良く取り上げられています。
先日リメイクされた『犬神家の一族』を見ていて、ああ、これは思いっきり相続の話しだったんだ!と驚きました。実は子供の頃に一度見ましたが、スケキヨのインパクトが強すぎて何の話しか全く覚えていませんでした。今回改めて見てよく分かりました。
最近見た実話をもとにした海外ドラマ『ペインキラー』も、物語の発端は相続です。という訳で、世界中、相続は良く取り上げられる題材ですよね。
先に書いた犬神家もペインキラーのサックラー家も、大富豪の話しですので、相続で争うのは資産家だけ、というイメージが皆さんにはおありのようですが、実際には額に関係なく争いは生じています。むしろ遺産が少ない家の方がもめる傾向にあるのかもしれません。
誰でも出来れば相続が「争族」になるのは避けたいですよね。という訳で、傾向と対策を書いてみたいと思います。
まず、令和2年度の統計によると、遺産分割でもめて裁判所まで行く事になった事例の8割が5000万円以下の相続です。その内1000万円以下が約35%となっています。この数字を見ると、随分身近な話しになってきませんか?
それでは、争いが生じてしまう原因をいくつか挙げてみましょう。
① 遺言書がない(相続人間で話し合って分配を決める事になる)
② 兄弟姉妹間で、親の介護負担等が平等ではなかった
③ 相続人が生前贈与された額に不公平を感じている
④ 不動産など分割が難しい資産がある
⑤ 預貯金が余りなく、不動産しか残っていない
⑥ 遺言書はあるが、遺産の分配に納得がいかない相続人がいる
⑦ 相続人の配偶者などが口を出す
映画やドラマで良くあるパターンは⑥と⑦でしょうか。先に書いた犬神家は⑥がメインでした。ですが、実際には、➁③④⑤も多い気がします。
➁については、親の面倒を私がみたのだから、私は多く相続する権利があるという考えと、子の相続は平等だという他の相続人との考えのズレから争いが生じます。
③ については、兄弟姉妹間で、かけてもらった教育費、結婚関連費用、孫への援助、生活費の支援など、過去から現在に至るまでの長い期間を対象にした争いになる事が多いようです。
そして、④⑤には不動産という資産をどう分けるかを話し合いで決める事の難しさがあります。例えば3人で家を相続した場合、1人でも「実家は思い出があるから売りたくない」と言うと、事実上売却は出来なくなります。あるいは、一人がその家を買い取ると言った場合、その家の評価額をどうするのかが難しい問題です。全員が納得する金額を話し合わなければなりません。また、相続人のうちの誰かがその家に居住している場合もあるでしょう。その場合、その人の新しい住まいが必要になりますので、話し合いは長期化しがちです。という訳で、不動産の相続は問題が起こりやすいのです。
という訳で、先にあげた相続問題の対策としては
争族を予防する遺言書を書く
・所有不動産に同居している人がいる場合、その人の事を考慮した内容にする
・介護等をしてくれた子供に感謝の気持ちを伝えたいなら、それを表した内容にする
・お子さんに対し、過去の支援格差等がある場合、遺産分配で補う内容にする
・ 遺言書に、余り極端な分配は書かない。民法上の相続分、遺留分を考慮する
・法的に有効な遺言書を作成するために、専門家に相談する
といったところになると思います。遺族の事を考えた時「うちの家族は仲が良いから皆で上手く話し合ってくれるだろう」と思い、遺言書を残さない方も多いと思います。ですが、相続による裁判所での「調停・審判」の数は、平成6年(9,868件)と令和元年(24,976件)では2.5倍と増加しています。
相続では実際、家の所有者の死後住む家を失う人が居ます。一家のリーダーがいなくなることは、一家の人間関係の変化を引き起こします。家族間の確執が噴出する場合も多々あります。
ただでさえ相続手続きは手間がかかるものですが、手続きに入る前から問題が噴出し、争いが生じてしまっては遺族が疲れ果ててしまいます。また、遺産分割協議が長期化すると相続税の納税期限10か月を迎えてしまい、最終的に決着した分配にかかる相続税よりも多く納税する事になってしまったという事も起こりえます。
高齢化に伴い、相続人の高齢化も進んでいます。相続が平穏かつ円滑に進められるように、遺言書は必要不可欠です。遺言書の作成について、ぜひご相談ください。