本籍は自由に変更できる?

皆さんはご自分の「本籍」をご存知でしょうか?本籍とは、「戸籍がある場所」の事です。
生まれた場所、住んでいる場所に関わらず、「本籍」の場所は自由に選ぶ事が出来ます。

そして変更も勿論自由です。この「自由に選べる」事を利用して、本籍を自分の好きな場所に変更する人も多くいます。人気の高い本籍トップ3はこちらだそうです。

①皇居
➁大阪城
③甲子園球場

本籍を移す事を「転籍」と言います。転籍をすると、それ以降のあなたの戸籍はその転籍先の市役所(区役所)が管理する事になります。
例えば、東京在住の人が大阪城を本籍とすると、現在の戸籍謄本の取り寄せは大阪市役所に請求する事になります。

「本籍が大阪城って面白いよね?」というノリで例えば転籍したとします。そうするとどのような影響が出てくるのか、気になりますよね?
まず多くの方に関係するのはこれでしょう。

①運転免許証の本籍変更手続き
➁パスポートの本籍変更手続き

いずれも、申請時には本籍が登録されている為、変更手続きが必要になります。本籍変更後は、速やかな変更手続きが必要です。運転免許証、パスポートの更新時に変更すれば良いというものではありません。
運転免許証は、本籍入り住民票等の必要書類を免許書センター等に提出して変更手続きを行います。申請すると免許証の裏に変更内容が記載されて返却されますが、パスポートは新しく作り直すか、現在のパスポートと残存期間が同一の新たなパスポートの発給申請をするかの2択となります。勿論必要なのは書類だけでなく、パスポートを作り直すための写真も撮り直しですし、パスポートの発行費用もかかります。変更ではなく実質的にはパスポートの作り直しと言えますよね。結構大変な作業です。
また、これは一般的ではありませんが、いわゆる士業の人も変更の際には届出の必要があります。当然行政書士も該当しています。

次に、出てくる問題は、相続発生時です。
相続発生時、相続人は亡くなった方の出生から死亡までの全ての戸籍を取り寄せる必要があります。転籍をするたびに、戸籍は作られて行きます。つまり、転籍をすればするほど相続手続きの手間が増えていく訳です。

それでは、具体的な例をあげてみましょう。

山田太郎さんは、先祖代々京都市に住む京都人の家に生まれました。その後、大阪の大学に進学、就職しました。そこで知り合った花子さんと結婚。大阪市内にマンションを購入。定年まで勤めあげた後、やはり生まれ育った京都に戻りたいと思い始め、大阪市内のマンションを売却して相続した京都市内の親の家に移住。一生を終える事となりました。

さて、この太郎さんの戸籍の問い合わせ先はどこでしょうか?という質問はとても大雑把なのですが、問い合わせ先は、一般的に考えると京都市役所と大阪市役所になります。

①出生時、出生届の提出に伴い親の戸籍に入籍(京都市)
➁婚姻により親の戸籍から除籍となり太郎さんと花子さんの新戸籍が作成された(京都市)
③大阪市のマンション購入時に、本籍を大阪市へ転籍(大阪市)
④終の棲家とした京都市に戻った際に、本籍を京都市に転籍(京都市)
⑤死亡届を家族が提出し、太郎氏は除籍となった(京都市)

とはいえ、実は太郎さんはお城マニアで各地のお城の所在地に転籍するのを趣味としていた、というような事があれば、転籍した分だけ問い合わせ先は増えていきます。
(補足ですが、太郎さんの生涯に作られた戸籍の数と①~⑤は同じではありません。戸籍は改製が行われていますので、太郎さんの生まれた年から亡くなるまでに行われた改製の回数により作られた戸籍の数も変動します)

逆に、生涯本籍を全く動かさない人もいらっしゃいます。例えば、山田太郎さんは、結婚後もずっと京都人でありたいと思い、京都市の本籍のまま、一度も転籍をしなければ亡くなった時に住んでいたのが例えば札幌市であっても、戸籍の問い合わせ先は京都市役所のみとなります。

死亡届を札幌市役所に提出しても、戸籍は京都市にありますから札幌市役所から京都市役所に死亡の通知がされ、京都市管理の戸籍に「除籍」と記載されます。

本籍が「皇居」「大阪城」「甲子園球場」「ディズニーランド」というような、好きな場所を自由に選べるというのはちょっと面白いなと思いますが、転籍にはデメリットも生じます。
転籍できるのだったら、私はここにしたい!と思った時には、デメリットも考えてみてから行動に移される事をおすすめします。
とはいえ、人から住所を聞かれる事はあっても、本籍を聞かれる事はまずないので、凄い!面白い!と言って貰えるチャンスは余りないかもしれませんね。では。

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