養子と相続
このブログでは、親、配偶者、子、孫、兄弟姉妹、甥姪、いとこなどの相続について取り上げてきましたが、先日あるドラマを見ていて、そういえば「養子」については取り上げていなかった事に思い当たりました。という事で、今回は「養子と相続」について書いてみたいと思います。
「養子」には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」があります。この二つの大きな違いは、養子縁組後の実親との関係です。
【普通養子縁組】
縁組後も実親子関係が存続します。つまり、普通縁組した人の場合、養親と実親が亡くなられた時、常に法定相続人となります。実例をあげてみましょう。
A夫妻には子供が3人居ました。A夫妻の妻の実家、B家には跡継ぎが居なかったので、A家の末っ子CがB家の養子となりました。
この場合、Cは自分の両親、養子となったB家、つまり祖父母に対して相続権があります。
【特別養子縁組】
特別養子縁組の場合、縁組後は実親子関係が終了します。つまり、特別養子は養親が亡くなった時は法定相続人になりますが、実親が亡くなっても法定相続人にはなりません。
なお、特別養子縁組は養子になる子が原則15歳未満である事が必要であり、養親は配偶者がいる方、かつ夫婦共同で縁組をする必要があります。また、特別養子縁組は家庭裁判所に申立てをし、認められて成立します。
ところで、養子の法定相続分は実子と同じと法律で定められています。例えば、夫が亡くなった場合、妻、実子、養子の合計3人が法定相続人である場合、相続割合は妻1/2、実子1/4、養子1/4です。
養子は「法定相続人」になりますので、相続税の基礎控除額を増額させる為に、つまり「相続税対策として養子縁組」を考える人も当然います。
養子が増えれば増えるほど、法定相続人は増えていきますが、相続税については別のルールがあります。
【養子と相続税】
相続税法上の養子については、人数制限があります。
◆相続税の基礎控除額の考え方
・実子がいる場合⇒養子を法定相続人とするのは1人まで
・実子がいない場合⇒養子を法定相続人とするのは2人まで
つまり、資産家が相続税対策として孫全員を養子にしたところで、実子がいるので一人分の600万円しか基礎控除額は増えないという仕組みになっています。
具体例をあげてみましょう。
<実子がいる場合>
A夫妻には妻、実子1人、養子2人が居ました。Aさんが亡くなった場合、法定相続人は妻と子3人の計4人ですが、相続税法上は実子が居ますので養子は1人とカウントされ、法定相続人は妻、実子、養子1人の計3人となります。
相続税の基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人3人)=4800万円
<実子がいない場合>
A家には妻、養子2人が居ました。Aさんが亡くなった場合、実子が居ませんので法定相続人は妻と養子2人の3人で、相続税法上も法定相続人は3人となります。
相続税の基礎控除額=3000万円+(600万円×3人)=4800万円
なお資産家が孫全員を相続人にした場合、についての補足ですが、もし資産家の子供が資産家より先に亡くなり(逆縁)その子供の子(つまり孫)が3人残された、というような場合は、代襲相続が発生しますので孫全員が当然の事ながら法定相続人となります。代襲相続による法定相続人は当然の事ながら、全員相続税の基礎控除額の対象となります。逆縁が発生した場合、相続税対策としては孫を養子にすべきでない、となります。
ところで再婚時の配偶者の連れ子は、以前も書きましたが血の繋がりのない親の養子にならなければ、相続人にはなりません。養子にせず遺産を渡すのは遺贈となりますし、贈与税の対象となります。法定相続人ではないので、相続税の基礎控除額の対象からも外れます。
再婚相手の連れ子に財産を渡すには、法定相続人にする養子縁組か、遺言書による遺贈のどちらかの方法となります。
相続、遺言書、法定相続人の確定等については、いつでもご相談ください。