「孫」と相続

前回は「子」の相続のお話しをしました。今回は子の子、つまり「孫」の相続のお話しです。

かわいい孫に自分の財産を相続させたい、と思われる方は案外多いのかもしれません。ではここで問題です。「孫」は「相続人」なのでしょうか?

答えは、常に相続人とはならず「場合による」です。それでは、それぞれのケースを見て行きましょう。

●孫が相続人にならない場合●
あなたの孫の親、つまりあなたのお子さんがご健在の場合、孫は相続人にはなりません。この場合、孫は法定相続人ではないのです。もし孫に財産を残したいと思ったら、遺言書を書く事になります。

という訳で、遺言書を書く事にしました。ここで注意点があります。遺言書で孫に遺産を渡すと書く。その場合は「孫に相続させる」ではなく「孫に遺贈する」と書かなければなりません。何故なら、孫は民法上「相続人」ではなく「受遺者」(遺贈を受ける者)だからです。

遺言書で「相続させる」と記す対象は「法定相続人」だけです。基本的に「孫は受遺者」だと覚えておいてください。

●孫が相続人になる場合●
孫が法定相続人となる場会は、次の二つです。
一つ目は孫の親、つまりあなたのお子さんが既に亡くなっている場合です。その場合、孫は自分の親の「相続人」の地位を「相続」します。これを「代襲相続」と呼びます。この場合、当然の事ながら孫は相続人ですので法定相続分があり、遺留分侵害額請求権もあります。

二つ目は、孫を養子にした場合です。「養子=子」ですので、当然の事ながら孫は相続人となります。養子も実子も「子」ですので、養子になった孫は、他の子と同じ法定相続分となります。
いずれのケースも孫が「相続人」となりますので、この場合遺言書には「孫に相続させる」と書く事になります。

最後にこんなお話しを。あなたが可愛がっている孫に「この家を渡したい」と思ったとします。その時注意すべきは、子と配偶者が持つ「遺留分侵害額請求権」です。「遺留分」は法的に認められたもので、請求されれば必ず支払わなければなりません。裁判で闘っても勝てないものです。
あなたに遺留分をカバーできる預貯金があれば問題ありませんが、もし財産がほぼ家のみである場合、せっかく孫に家を遺贈したとしても、孫が他の相続人から請求された「遺留分」を支払えるほどの資金がなければ、その家を売却して支払う事になってしまいます。

遺留分は、2019年7月の民法改正により「遺留分侵害請求」となりました。「物」の請求は認めず「侵害額」の請求に一本化されたのです。つまり、遺留分は全て金銭で支払う事になりました。
お孫さんに資産を遺贈したいと思った時。その場合はまず、ご自身の全資産を洗い出し、法定相続人を把握し、遺留分を計算してみてください。そして、揉め事にならないようにお子さんたち相続人と、遺言書を作成する前に出来れば話し合ってみてください。

あなたの死後、あなたの遺言書がもとで、お孫さんがもめごとに巻き込まれないように良く考える事が必要です。そして、遺贈を決められたら、遺贈が確実に行われるように遺言執行者を指定し、遺言書に書いておく事もお忘れなく。勿論、遺言書の形式は公正証書遺言書を選ばれる事をおすすめします。

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