実家の相続 ③売却準備(後編)

前回、実家の売却前に行う所有者の確認、相続人の確認、そして相続登記までお話してきました。(実家の相続、実家の相続
今回は、解体費用、税金と探しておくべき書類のお話しです。

【④遺品整理】
家を売却する時に、家付きで売るのか、更地にして売るのか悩まれると思いますが、どちにしても遺品整理は必要になります。

●家付きで売却する場合
基本的に、家の中を空にする必要があります。(古民家等の場合、買主から古い家具も欲しいと言われたという話しを聞いた事はあります)ご自分で片付けられるのか、業者に依頼するかどちらかになります。
ご自身で整理される場合、ゴミ出しが問題となると思いますが地方自治体に問い合わせれば、クリーンセンター等に持ち込めると思いますので、お問い合わせください。
遺品整理業者に依頼する場合は、料金等のトラブルも聞きますので相見積もりを取る、業務契約内容をしっかり確認するなど良く考えて契約してください。

●更地にして売却する場合
家を解体して売る場合、家の中に遺品が残されたままでも全て廃棄して貰えます。しかし、費用は廃棄物の量によって増えてきます。例えば、トラック何台分の廃棄物が出たかで廃棄費用はカウントされていきます。ある程度片付けて、廃棄物の量を減らす事は解体費用をおさえることにつながります。
家の前の道が狭すぎてトラックが横付けできない、解体するのに重機が入るスペースがない、という事になるとその分費用は上がっていきます。家から車まで、人の手で廃棄物を運ぶ、重機でなく人の手で解体する、という事になるからです。
また、解体費用は、木造より鉄骨造、そしてRC造が一番高くなります。という事で、家の周囲の状況、素材等によって解体費用は変わってきます。

不動産は、家付きよりも更地の方が資産価値は上がりますが、解体費用は高額ですし、後に書きますが固定資産税の問題もありますので、良く考えてみてください。

【⑤売買前に揃えておきたい書類】

●家の権利証
不動産登記をした際に登記名義人に交付される「登記済権利証書」という書類には、所有権が記された大事な書類です。平成17年以降は電子化に伴い権利証は作成されなくなり「登記識別情報」になっています。大切な書類ですので、基本的に家のどこかに保管されているはずです。場合によっては貸金庫に入れられているかもしれません。

これらの書類は、紛失すると再発行は出来ません。とはいえ、紛失すると権利が無くなったり登記が抹消されるというものではありませんのでご安心ください。
権利証がなくても相続登記は出来ます。つまり、所有権の移転が出来ます。相続登記を行い、売却時には、次の方法のいずれかを取ります。

①公証人に本人確認、書類を作成してもらう
②司法書士などに依頼し、本人確認情報を作成してもらう

どちらにしても費用がかかります。実家の権利証があれば、大事に保管しておきましょう。

●売買契約書など取得費が分かる書類
家を購入した時の「売買契約書」や手数料支払い時の領収書などは、相続登記や売買に必要な書類ではありませんが、家を購入した時の「取得費」を記した書類は、税金を考える上では入手しておきたい書類となります。

何故なら取得費の方が売却額よりも高い場合、「売却益」は出なかった事になるので「譲渡所得税」はかからなくなるからです。
取得費が分からない場合は、売却価格の5%を取得費として計算する事になります。

◆譲渡所得の計算式◆
 譲渡所得の金額=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)

・取得費⇒購入代金、購入時の仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、設備費、改良費など
・譲渡費用⇒譲渡時の仲介手数料、賃借人への立退料、印紙税、建物の取り壊し費用など

実家売却前にはどちらも探し出し、保管しておきたい書類となります。

ところで、税金の話しが出てきたので、固定資産税についてもお伝えしておきます。

【更地の固定資産税について】
更地にすると、固定資産税は高くなります。正確には、高くなるのではなく特例である「減額措置」の対象外となるため、結果的に増額されます。

◆住宅用地の課税標準の特例◆
・小規模住宅用地(200㎡以下の部分)
課税標準=固定資産税評価額×1/6

・一般住宅用地(200㎡超の部分)
課税標準=固定資産税評価額×1/3

固定資産税の支払額は、解体した翌年から増額されます。因みに、固定資産税は1月1日に所有している人が支払うものと定められています。
200㎡以下の家を解体して更地にした場合、1/6の特例が外れますので小規模住宅の固定資産税を5万円払っていた場合、更地にすると5万×6=30万円と大幅増額となります。
固定資産税の納付額は、固定資産税と都市計画税の二本立てですので、単純に納付額が6倍とはなりませんが、納付額の大部分を占めるのが固定資産税ですので、大幅増額となる事は間違いありません。
昨今、売れない不動産も増えて来ていますので、更地にした方が売りやすいとはいえ、売れるまで固定資産税を払い続ける事も考えてから家の解体をされる事をおすすめします。

不動産の売却には、不動産会社への依頼が一般的ですが、最近では市役所等の空き家バンクに登録される方もいらっしゃいます。空き家バンクへの登録は、当然の事ながら相続登記が完了しなければ受付けて貰えません。

相続登記は令和6年4月1日から義務化が始まりました。令和6年4月1日以前の相続も、令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。

実家を相続した時、相続人の話し合いは先延ばしするほど相続人が増えていくリスクがあり、管理費用も嵩んでいきます。先延ばしにして良い事はありません。
相続手続きで悩まれたら、いつでもご相談ください。

※当事務所では、不動産登記簿謄本の取得、相続人の特定とそれに付随する戸籍の取寄せ、
 遺産分割協議書の作成等を行い、司法書士に相続登記の依頼をしています。
 オンラインを使い、地域に関係なく受任しています。いつでもご相談ください。

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