「相続人なき遺産」のお話し

早いもので1月も下旬となりました。今週は大寒波の到来で、色々心配ですね。皆様お気をつけください。さて、本日は気になる記事を読んだので取り上げてみたいと思います。

2023年1月23日付の朝日新聞一面トップによると、2021年の「相続人なき遺産」「647億円」に達したそうです。これが意味するところは、647億円が国庫に入った、と言う事です。

記事によると、2021年度、国庫に入った遺産は647億円。10年前と比べるとその額は倍に増えており、その理由は「おひとり様」の増加や不動産価格の上昇を背景に行き場のない財産が増加したからだそうです。この20年で国庫に入った遺産は6倍も増加したとありました。おひとり様は増加傾向にあり、高齢化もますます進んでいきますので、今後更なる増額が予想されます。因みに、65歳以上で一人暮らしをされている方は、2020年時点で671万人、7年後の2030年には800万人近くになると予想されています。

ここで気になるのは、その「遺産を残した人たちは、本当に国に遺産を渡したかったのか」ですよね。

それでは、「相続人がいない」とはどのようなケースなのかを考えてみましょう。

相続人がいない方は、次の項目全てに当てはまる人です。

①配偶者、子がいない
➁ご両親が亡くなられている
③ご兄弟姉妹が亡くなられている
④ご兄弟姉妹が亡くなっており、その方達の子である甥姪がいない

この全てに該当しており、遺言書を書いていない場合その人の財産は死後「相続人なき遺産」になります。(未婚の方でも認知した子供がいれば、子が法定相続人となります)

それでは、全てに当てはまる方が「遺産を国庫に入れない」ためにはどうすれば良いのでしょうか。それは、「遺言書を書く」ことしかありません。という訳で、新聞の記事にも「早めに遺言書を」とありが、正しくそれしか方法はありません。

知り合いと話しをしていると「そのうち遺言書を書かないと」とか「10年後ぐらいに書こうかな」という話しを良く聞きます。

ここでお伝えしたいのは、遺言書を書くには「遺言能力」が必要で「元気なうちにしか書けない」という事です。また、ご高齢の方については、今はお元気でも明日何が起こるか分からないので出来るだけ早く書いておくことをお薦めします。
転倒して骨折して入院された方、ウィルス感染して入院された方など色々な例を実際に見てきていますので、ご高齢の方程一日も早く遺言書作成が必要だと強く感じています。
因みに、ご存知の方は多いと思いますが、認知症を発症すると、遺言書は作成できなくなります。

さて、「遺言書」というと、書いたら簡単には内容を変えられないと思っている方、自筆証書遺言書なら簡単に自分一人で書けると思われている方が案外多いようです。
という訳で、本当にそうなのかを含め、次の内容をお伝えしておきます。

  • 遺言書は何度でも書き直せるし、最新の日付のものが有効な遺言書となる
  • 遺言書は、家族構成や資産の変化などに応じて必要があれば書き直すと考えた方が良い
  • いつか書こうと思っていると、いつまでたっても書けないし、必要な時には書けなくなっている事が多い(エンディングノートも買ってそのまま書かずに終わる人が多いそうです)
  • 自筆証書遺言書は手書きをしなければならず、最近手書きをする機会が減っているので、高齢者でなくても間違えずに手書きする事が困難な方が増えている
  • 遺言書は法律上間違った内容である場合、無効となるので、専門家に相談する
  • 相続人がいない場合でも、自分が遺贈したいと思うNPO団体や、人がいる場合、遺言書を作成すれば遺産を渡す事が出来る

同日の朝日新聞の記事では、20億円を超える財産を持つおひとり様の資産家が生前「国には渡したくない」と言っていて、「遺言書作成案」まで作っていたのに、まだ早いと結局作成には至らず、遺言書を書かなかったばかりに、ほとんどの遺産が国庫に入ったというケースを紹介していました。
この「まだ早い」と書かずにそのままになってしまったというのは、良くあることなのかもしれません。

資産の額に関わらず「自分の遺産の行先や分配は自分の意思で決定したい」そう思われる方は、まず遺言書の作成を考えてみてください。そして、せっかく遺言書を作成するのであれば、自分の意思の通りに遺産をちゃんと渡せるように、法律上有効な遺言書を残す。その為に、専門家に相談する事をお薦めします。

当事務所では、日本全国オンラインでのご相談も受けています。いつでもお問い合わせください。

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