遺言書の有無が分からない時は

突然ですが、質問です。あなたが相続人となる親や親族が亡くなられた時、遺言書の有無が分からなかったらどうしますか?

家中探しますか?親戚中に遺言書を預かっていないか聞いて回りますか?いずれにしても、見つけ出すのはなかなか大変な作業です。
もし銀行の貸金庫を借りていたらそこにあるかもしれませんが、故人が契約している貸金庫はそう簡単には開けてもらえません。
遺言書はあるかもしれないし、無いかもしれない。遺言書はあっても、家の外で保管されている可能性もあります。という訳で、今回は探し方のお話しです。

遺言書の保管先としては主に次の5つが考えられます。

①公正証書遺言書を公証役場に預けている
➁自筆証書遺言書を法務局に預けている
③銀行の貸金庫に預けている
④自宅のどこかに保管している
⑤信頼できる誰かに保管を依頼している

④⑤は自分達で探すしかありませんが、その他はどうしたらよいのでしょうか。

①「公正証書遺言書」
この場合は、公証役場に問い合わせます。公正証書遺言書はデータベース化して保存されていますので、依頼をすれば探してもらえます。ただし、これは遺言者が亡くなった後にしかする事が出来ませんのでご注意ください。
例えば、親が亡くなった場合は、親が死亡した事および、死亡した親の子である事を証明する戸籍謄本とご自身の身分証明書を持参して公証役場に行きます。公証役場は照会をして遺言書の有無の報告をしてくれます。遺言書が有れば保管している公証役場に「公正証書遺言の謄本の交付申請」をすれば完了です。

➁「自筆証書遺言書」
自筆証書遺言書の保管制度を利用している場合は、被相続人の死後、相続人は「遺言書保管事実証明書の交付の請求」により、遺言の有無を確認する事が出来ます。ただし、これも遺言者が亡くなった後にしかする事が出来ませんのでご注意ください。

③「貸金庫」
最初にお伝えしておきますが、もし親御さんが銀行の貸金庫を借りていたら日々の会話の中で「遺言書は貸金庫に入れないように」と伝えておくことをおすすめします。案外、貸金庫に何でもいれておけば大丈夫と思っている方は多いものですが、これは後々かなり厄介な事になります。
では、遺言書が貸金庫に入っていたらどうなるのでしょうか。銀行ごとに細かい規定は違いますが、基本的にはこうです。

まず貸金庫も預貯金と同じ扱いになります。銀行が契約者の死亡を知った時点で貸金庫の開閉は一時的に停止します。開けるには「相続人全員の同意」が必要になります。具体的にどういう事かというと

・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
・貸金庫の鍵または貸金庫カード(見つからなければ銀行にご相談ください)
・遺産分割協議書または相続人全員が同意した旨の書面

以上が揃わなければ、基本的に貸金庫は開かないのです。さらに、貸金庫を開ける時には、相続人全員の立ち合いが求められます。もうお分かりだと思いますが、かなり大変です。
戸籍を取り寄せて相続人の特定をし、実印を持っていない相続人はまず印鑑を作成。実印を持って役所に行って登録をし、印鑑証明書を取ってくる。そして全員集合して銀行に行き、貸金庫を開ける。連絡がつかない人や海外在住者が居たりすると、話はますます厄介になってきます。

貸金庫を開ける手続きを簡略化する為に、遺言書で貸金庫を開ける人を指定しておけば手続きは簡略化されますが、その遺言書が貸金庫の中にあったら全く意味がありません。とにかく、貸金庫に遺言書を入れておくのはせっかく残した遺言書の効力が取り出されるまで発揮できない、最悪のパターンの一つと言えるでしょう。これぞ本末転倒です。
親御さんが貸金庫を契約している場合は、ぜひ「遺言書は貸金庫に入れないように」とうまくお伝えください。

遺言書は無いだろうという憶測のもと、遺産分けの話し合いがついた後に遺言書が出てくると協議が無駄になってしまう可能性が大です。まずは、公証役場、法務局への問い合わせをしつつ、親御さんのご自宅を探してみる事をおすすめします。

このサイトをフォローする!