自筆証書遺言管理制度の申請手順

先日、「自筆証書遺言管理制度」を利用して、法務局に自筆証書遺言を預けてきました。
この制度自体まだ余り世の中に知られていませんし、実際に預けるにはどうすればいいのかも勿論知られていなさそうなので、今回はこの制度の利用方法について書いてみようと思います。

「自筆証書遺言管理制度」そのものについては、以前書いたブログのこちらをご覧いただくとして、この制度の申請手順を説明します。

私が訪れたのは奈良法務局です。遺言書を預けようと思ったら、必要書類を揃えた上で「遺言保管所」(法務局内)の担当者に予約をしなければなりません。予約の枠は、1人1時間です。
法務局に到着すると、「自筆証書遺言保管制度」のポスターが多数掲示されており、階段には窓口へ誘導するかのようにシールが貼られていました。そう。この制度を法務局が「絶賛お薦め中!!」という感じなのです。この制度のマスコット、カンガルーの親子(それに因んで今回のブログの画像もカンガルー親子にしてみました)があちこちに貼られていて、部屋には手作り感あふれるぬいぐるみまで置いてありました。

それではまず、法務局を訪れる前の準備について。

1.用意するもの
①自筆証書遺言(こちらを参照してください)
➁保管申請書(フォームはこちらです)
③住民票の写し1枚(本籍及び筆頭者の記載あり、マイナンバーや住民票コードの記載なしのもの)
④顔写真入りの身分証明書(運転免許書、マイナンバーカードなど)
⑤手数料3,900円(収入印紙。法務局で購入できます)

①の自筆証書遺言は、法務局の規則又は民法の形式上の問題があれば書き直す事になり、何度も遺言書保管所に足を運ぶ事にもなりますので、行政書士など専門家にご相談の上作成される事をお薦めします。また、法務局では遺言書の内容までは精査されません。せっかく作成した遺言書が結果的にその役割を果たせなかった、相続人にもめごとを引き起こす原因になってしまったという事がないように、法的に有効な遺言書を作成するためにも、専門家に相談される事をお薦めします。
➁は当日その場で書くのではなく、事前に書いておきましょう。こちらは手書きでもPCでの入力どちらでも良いとされています。

 2.遺言保管先の決定と予約
預ける先は次の中から選択します。その上で、予約です。

<この中から選択>
①遺言者の住所を管轄する遺言書保管所
➁遺言者の本籍地を管轄する遺言書保管所
③遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所

予約はこちらをご覧ください。

書類の確認は法務局の局員がします。1の①~④を提出します。一通り確認した上で、局内で印紙を購入して来てくださいと言われます。事前に用意しておかなくても問題ありません。席を外している間、担当者は内容と保管手続きの作業を継続されていました。

「用意するもの」に戸籍等が含まれていない事から分かるように、法定相続人の確認はされません。確認されるのは、この制度で決められた形式が守られているか、遺言書の基本的な民法上の形式が守られているかです。
確認の中で、保管申請書に不備があればその場で訂正してくださいと伝えられます。印鑑は不要です。(遺言書の訂正には印鑑が必要ですし、細かい決まりがあります)

担当者のチェックが終われば、「保管証」を渡されます。こちらは紛失しないように大事に保管してくださいと伝えられました。その折に、「変更の届出」等についての説明と書類も渡されます。

これで手続きは完了です。予約の枠は1時間ですが、1時間かからずに完了しました。
という訳で、遺言書に不備がなければ、手続き自体は非常に簡単です。注意点は、必ず本人が手続きをしなければならないという事ぐらいです。

実際に手続きをしてみての感想ですが、これはとても良い制度だと思います。3900円の手数料で、何十年も保管してくれる上に、検認不要で、死亡届が提出された時に、遺言者が希望すれば、指定した人に「遺言書を預かっています」という通知を自動的に行ってくれるのですから。地方自治体の役所と法務局の連携はなかなか画期的だと思います。公正証書遺言はまだこの「通知制度」はありません。2022年6月の時点で、遺言書に関して公証役場と地方の役所の連携はまだ行われていないのが現状です。

という事で、「自筆証書遺言管理制度」はとても良い制度だと思いますし、手数料も手ごろなので、皆さんにもこの制度の利用をお薦めしたいと思います。

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