遺言書の「検認」とは?

親御さんが亡くなった後、実家を片付けていたら親御さんの筆跡と思われる手書きの「遺言書」が出てきました。
遺言書の中身、気になりますよね?そこで思わず開封して中身を確認しました。さて、この行為は法的に「〇」でしょうか「×」でしょうか?

答えは「×」です
民法では「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない」と定められています。つまり、自筆証書遺言を見つけた人、もしくは預かっていた人は、親御さんが亡くなった時、家庭裁判所に「検認の申し立て」をしなければなりません。検認は遺言書の確認と偽造・変造の防止が目的です。

もし申し立てをしなかった場合はどうなるのでしょうか。この場合、民法では5万円以下の過料に処されます。更に、勝手に遺言書を開封してしまった場合にも同じく5万円以下の過料となると定められていますので、遺言書を見つけてその場で勝手に開封したら10万円以下の過料となりますが、実際に科されることはほとんどないようです。

では勝手に開封しても問題ないかというと、民法に抵触していますし、残念ながら相続人間のもめごとの種になる可能性があります。
「勝手に開封して中身を書き換えたんじゃないか」と考える人が出てきた場合、話しはこじれていきます。という訳で、遺言書を預かった、もしくは見つけたら開封せずに「検認の申し立て」をしてください。また、開封して遺言書を読んでから封印し直すというのも無しです!開けてしまったら正直にその旨を伝え開封したまま保管しましょう。

では、「検認の申し立て」とは何をすればよいのでしょうか。
まず費用ですが、2022年3月現在、収入印紙代800円と連絡用の切手代ですので1,000円程度です。ですが、これ以外に必要書類の取り寄せに時間と費用がかかります。申し立てに必要な書類は次の通りです。

  • 申立書
  • 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言者の子(及びその代襲者)で故人がいる場合、その子(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

これが基本で、その他に遺言者と申立人の関係によって必要な書類が変わってきます。

必要書類の提出が終わったら、次は検認の日の立ち会いです。申立人と相続人が立ち会い、家庭裁判所で遺言書が開封されます。申立人の立ち会いは必須ですが、相続人は各自の判断で欠席してもかまいません。家裁は遺言書を確認し、「検認調書」を作成します。

この検認の作業は準備期間を含めて大体2か月程度かかると思っていた方が良いでしょう。諸手続きをしている時間が無い、手続きが良く分からないという方は、行政書士までご相談ください。

さて、検認を待つ間、相続手続きはストップします。銀行での相続手続きには「検認証明書」の提出を求められます。相続人は「検認」の終了後、家裁に「検認済証明書」の発行を申請します。この証明書を入手して、やっと銀行の手続きを始める事が出来るのです。

遺言書が存在していて検認を回避できるのは次の方法しかありません。

  • 公正証書遺言を残しておく
  • 自筆証書遺言書保管制度を利用する

ちなみに、遺言書がなかったらどうなるかという話しはまた別の機会に。

とにかく、検認は手間と時間がかかります。遺言を残す方は、相続人の事を考えて検認が不要な形式で遺言を残す事をおすすめします。

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