逆縁と相続
今回のお話は高齢化社会では起こりうる「逆縁」(子が親より先に亡くなる)のお話しです。
厚生労働省の発表によると、2022年の平均寿命は81.47歳、女性の平均寿命は87.57歳です。長寿が進む中、親よりも先に子が亡くなるケースは珍しい事ではないのかもしれません。実際、私も逆縁となったお話しをいくつか聞いています。
それでは、逆縁が起こった場合、相続はどうなるのでしょうか。実例を挙げてみましょう。
■一人っ子(独身、子なし)が亡くなった場合
相続人は親となります。お二人ともお元気な場合は、1/2ずつの法定相続分、片親になっている場合、法定相続分は全財産となります。
一人っ子のお子さんが亡くなった場合、将来ご両親のうちのお一人が亡くなった時の相続については注意が必要です。
お子さんがいらっしゃらなくなった段階で、「子がいない夫婦」と同じ法律が適用されます。
例えば、夫が亡くなった時に相続人は妻と夫の親、親が亡くなっていれば夫の兄弟姉妹(兄弟姉妹も亡くなっていたら甥姪)となります。
夫のご両親には遺留分がありますが、兄弟姉妹には遺留分がありません。遺留分は、当事者が請求しない限り渡す必要はありません。
残された配偶者が全てを相続するには遺言書を作成する事をお薦めします。遺言書が無い場合、配偶者が全てを相続するには相続人全員の同意が必要です。
一人っ子のお子さんが亡くなられた場合、残された親御さんには遺言書の作成をおすすめします。
■一人っ子(既婚、子なし)が亡くなった場合
相続人は、残された配偶者と亡くなられた方の親となります。法定相続分は配偶者2/3、親1/3です。
そしてこの場合も、お子さんが亡くなられた段階で、ご両親の相続は「子が居ない夫婦」と同じ法律が適用されます。残された親御さんには遺言書の作成をおすすめします。
■一人っ子(既婚、子あり)が亡くなった場合
相続人は、配偶者と子となり、ご両親への相続はありません。配偶者1/2、子1/2です。
その後、残されたご両親のうちお一人が亡くなられた場合、例えば夫が亡くなったとすると、相続人は妻と孫となり、法定相続分は妻1/2、孫1/2(本来、子が相続するはずだった法定相続分を代襲相続する)となります。
遺言書があれば、孫の遺留分(このケースでは全財産の1/4)以外の全てを妻に相続させる事が出来ます。
■3人兄弟の中の一人(独身、子なし)が亡くなった場合
相続人は親となります。お二人ともお元気な場合は、1/2ずつの法定相続分、片親になっている場合、法定相続分は全財産となります。この場合、ご両親にはあと2人お子さんがいるので、ご両親のうちお一人が亡くなった場合の相続は、当然「子が居る夫婦」の法律が適用されます。例えば夫が亡くなった場合、法定相続分は妻1/2、子2人で1/2となります。
■3人兄弟の中の一人(既婚、子なし)が亡くなった場合
相続人は、この配偶者と亡くなられた方の親となります。法定相続分は配偶者2/3、親1/3です。
この場合も、ご両親のうちお一人が亡くなった場合の相続は「子が居る夫婦」の法律が適用されます。例えば夫が亡くなった場合、法定相続分は妻1/2、子2人で1/2となります。
■3人兄弟の中の一人(既婚、子あり)が亡くなった場合
相続人は、配偶者と子となり、ご両親への相続はありません。配偶者1/2、子1/2です。
残されたご両親のうち、お一人が亡くなった場合の相続は「子が居る夫婦」の法律が適用されます。例えば夫が亡くなった場合、法定相続分は妻1/2、子2人と亡くなった子の子(親から見れば孫:代襲相続)全員で1/2となります。子は1/6ずつ、孫は全員で1/6(孫が2人居れば1/12)の相続分です。
2021年の出生動向基本調査によると、日本における一人っ子の割合は約29.4%です。
民法上相続において、子は一人で全てを相続する事が可能ですが、配偶者は相手に子、孫、親、祖父母等の直系と兄弟姉妹(甥姪)が居ない場合を除き、一人で全てを相続する事にはなりません。(こちらも併せてお読みください)
もしお子さんのいらっしゃらないご夫婦で、配偶者に全ての財産を相続させたいとお考えなら、遺言書が必要です。遺言書は、相続問題を回避し、配偶者の生活を護ってくれます。
人生100年時代といわれる今、家族の形、今までは当たり前と思っていた事が変化しています。時代の変化に対応できるように備える事を、考えてみてください。