相続割合と相続税

以前「他人ごとではない相続税」というブログを書きました。相続税の基礎控除額の改正により、相続税課税対象者が増えたという内容でした。
今回は、実際に相続税の課税対象になった時に誰がどの割合で負担するのかについて整理したいと思います。

相続が発生した時、相続人は亡くなられた事を知った翌日から10か月以内に相続税の課税対象であるなら相続税を納付しなければなりません。遺産の総額が相続税控除額内であれば何もしないで終わります。という訳で、まずは遺産の総額を調べます。
持ち家があれば、直近の固定資産税納税通知書にある評価額等をもとに相続税における不動産の評価額を算出します。次に、預貯金、株等を加算していきます。借金があればその分はマイナスの資産ですので当然控除します。また、通夜、告別式、火葬、納骨、戒名の費用も控除対象です。一方、香典返し、法要費用等は控除できません。
株式については、4つの評価方法のうち最も価格の低い物を選択して申請する事が可能です。

全ての遺産について調査が完了しましたら、合計額を算出します。それでは、例をあげてみましょう。

【例】
遺産総額  :6000万円
法定相続人:妻、長男、長女
法定相続分:妻(1/2)、長男、長女(各1/4)

相続税控除額=3000万円+(法定相続人3人×600万円)=4800万円
相続税課税対象額=遺産総額6000万円-相続税控除額4800万円=1200万円

次に、相続人の法定相続割合で各相続人の法定相続分に応ずる取得金額を算出します。

妻  :1200万円×1/2=600万円
長男:1200万円×1/4=300万円
長女:1200万円×1/4=300万円

各相続人の「法定相続分に応ずる取得金額」は1000万円以下となりました。という事で、国税庁のホームページにある「相続税の速算表」の1000万円以下の税率に該当するという事になります。
この場合の税率は「10%」です。(金額によって税率が細かく決められています)相続税額は次の通りになります。

妻  :600万円×10%=60万円
長男:300万円×10%=30万円
長女:300万円×10%=30万円

相続税の合計=120万円

という事になります。ところで、実際の相続分は遺言書や遺産分割協議で法定相続分の通りではない相続分になる場合があります。
例にあげたこのご家族。妻が全てを相続してお子さん二人は相続しなかったとします。
相続税は「相続した財産の割合で負担する」のが基本ですので、この場合妻が120万円を納付し、何も相続しなかった子供達は納付しないという事になります。

という事で、相続税と相続割合についてお分かりいただけたでしょうか。

【相続税の計算方法まとめ】

①遺産の総額を算出する
➁故人の全戸籍から法定相続人を把握し、相続人の数をもとに「相続税控除額」を算出する
③遺産総額から相続税控除額を差し引き、プラスであれば「法定相続分に応ずる取得金額」を算出
④各相続人の取得金額をもとに国税庁が定める相続税の税率を調べて相続税額を算出
⑤④の合計を実際の相続割合で分割したものが、各相続人の相続税納付額となる

ところで、税制には色々な「控除」や「特例」があります。
例にあげた「妻が支払う相続税、120万円」については、「配偶者控除」が適用される可能性があります。
相続開始の翌日から10か月以内に相続税の申告をすれば、相続税を払わなくてよくなります
その件については、また別の機会にお話ししようと思います。
その他にも、「小規模宅地等の特例」というものも存在しています。持ち家が遺産に含まれる方は、知っておくべき特例です。

相続税を納付する人の割合はご遺族の約1割ですので、10人に1人は申告しています。そして相続税の申告を自分で行った人の割合は、令和5年で13.7%、税理士に依頼した方は86.3%でした。

相続税は期間内に支払わないと追徴課税がありますし、相続人の中に支払わない人がいると「連帯納付義務」がありますので、他の相続人が払わなければならなくなります。また、誰かが他の相続人の相続税を肩代わりすると、今度は「贈与税」が課されます。(とりあえず他の相続人が払い、後日当事者が代わりに支払ってくれた相続人に返済する場合は贈与ではありません)という訳で、とにかく相続税は納付期間内に、納税義務者本人が納付することが大切です。

私たちファイナンシャルプランナーは、個別具体的な相続税の計算や国税庁への申告は出来ません。しかしこのブログに書いたように一般的な相続税の計算方法をお知らせする事は出来ますし、相続税対策等についてのご相談、ご提案をすることが出来ます。申告の必要があるとなった場合、税理士さんをご紹介する事も出来ます。

当事務所では二次相続(親御さんのお一人が亡くなられた時を一次、残された親御さんが亡くなられた時を二次相続と呼びます)と相続税を考慮した相続についてのご提案をしています。
もちろん、行政書士として法定相続人の確認、「遺言書」や「遺産分割協議書」の作成のご依頼もお受けしています。
法定相続人の確認は、相続税の基礎控除額に関わる大事なポイントであり、全ての相続手続の基本となります。正確に把握する必要があります。

人が亡くなられてから10か月は、あっという間に経過します。いつでもご相談ください。

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