実家暮らしの子の相続

いわゆる「実家暮らし」をしている人の割合は20代後半で40%、30代で約30%、40代でも約20%という調査結果があります。実家暮らしの男女比は、男性の方が多いそうです。
今回は、実家暮らしをしている状態で相続が発生した場合について考えてみたいと思います。

実家暮らしの人は、ご両親を扶養されている方もいらっしゃると思いますが、ある程度の生活費を家に入れているか、家にはお金を入れず親に生活の面倒を見て貰っているかのどちらかのケースが多いと思います。
同居をしていて親が高齢になってきたら、親の介護を担う事になるでしょう。
このような状況で親御さんが亡くなった時、相続はどうなるのでしょうか。

一人っ子が実家暮らしをしている場合は、ご両親が亡くなれば全てを一人で相続する事になります。(子の相続についてはこちらをお読みください)
しかし、兄弟姉妹がいる場合、両親が亡くなった時に実家暮らしの子と実家を出た他の兄弟姉妹との相続分が問題になりがちです。

特に、親に子供の頃と同じように生活を支えて貰っていた人の場合、兄弟姉妹からは一人だけ色々と恩恵を受けていると考えられがちです。それは「特別受益」なのではないか?と思う人が多い訳です。
「特別受益」とは、亡くなった人から遺贈や生前贈与により特別の利益を受ける事を指します。大人になっても親に日々の生活を支えていて貰っていた事は特別受益に当たるのでしょうか?
特別受益か否かの争いは数多く法廷に持ち込まれていますが、裁判では「特別受益には当たらない」と判断されるのがほとんどです。

一方、実家暮らしで親の介護を担った人は他の兄弟姉妹よりも自分は親の面倒をみたから、その分多く相続出来るはずだと考えがちです。つまり、親の介護に貢献したという主張です。これを法律上「寄与分」と呼びます。
「寄与分」とは、亡くなられた方の「財産維持・増加に貢献した人が相続分に加えて受け取れるもの」の事です。

親の通院の送り迎えをした、介護事業所を利用しながらサポートをしていたというような、補助的な介護は通常「財産の維持・増加に貢献」とまでは言えず、寄与分を認められにくいでしょう。分かりやすく言えば、面倒をみて当たり前の範囲内という事になります。(介護と相続についてはこちらをお読みください)

実家暮らしをしていた人は、親の死後「住居」についての問題が浮上します。
子の相続分は平等です。遺言書がなければ、家をどうするのかを相続人全員で話し合う事になります。

残された預貯金の額が不動産評価額と同程度であれば、家は実家暮らしの人、金融資産はもう一人が相続するという事で丸く収まるかもしれません。しかし、良くある「家はあるが預貯金は無い」という状況であれば、家を売却し、売却益を預貯金と合わせて相続人で分けるというのが一般的です。

遺言書が無い場合、相続は相続人全員で話し合う事になります。そしてその話し合いでは、全員が同意すれば相続分を自由に決める事が出来ます。両親の面倒を良くみてくれたから多めに相続してもらっていいよ、という兄弟姉妹もいるかもしれません。
ですが、実際には家を売却するので実家を出る事になった、今まで両親が兄弟姉妹の一人一人に援助してくれた金額をリスト化するほど揉めていて協議が全くまとまらない、遺産はないからと他の相続人が話し合いすらしようとしてくれない、兄弟姉妹の配偶者が話しをややこしくしてくる、といった話しを耳にします。そのような話しを聞く度、本当に兄弟姉妹の相続分の話し合いは、難しいなと感じます。行政書士に出来る事は、皆さんで話し合い、合意された結果をもとに「遺産分割協議書」を作成する事です。争いが生じた段階で、弁護士の業務となります。

ご自身の死後、お子さん達が相続でもめて欲しくないと思われる方は、遺言書を作成されるのが揉め事回避の方法となります。ここでポイントとなるのは、遺族が揉めない遺言書を作成する事です。(こちらをお読みください)遺言書がい方が良かったという事にならないように、専門家に相談して遺言書は作成する事をおすすめします。

いつでもご相談ください。

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