そもそも相続とは?

2025年1月の月別死亡者数は戦後最多の17万人以上になったと言われています。高齢化や感染症など様々な要因が重なって死亡者数が急増しているのかもしれませんが、それにしても多いと感じます。
死者数が増加すれば相続もそれだけ増加しています。という訳で、今回は「そもそも相続とは?」について取り上げてみたいと思います。

人が亡くなると、必ず発生するのが相続です。相続とは、「亡くなった方の財産などの権利・義務を遺族が引き継ぐ」ことです。つまり、権利だけでなく「義務」も相続するという事です。例えば、故人が借金をしていたら、借金を返済する義務が相続によってやってきます。預貯金や不動産などのプラスの財産も、負債などのマイナスの財産も全て相続されるのです。

また、相続は故人との続柄によって「法定相続分」が法律で決められています。遺言書が無い場合、話し合って相続の分配を決めるまで相続分は決まらないと思われている方が多いと思いますが、相続の話し合いは「法定相続分の配分を話し合いで変更する」というものです。つまり遺言書がない場合、あくまでも基本は法定相続分です。話し合うまでもなく、相続発生時に相続人は法定相続分を相続しているのです。
(遺言書がある場合には、相続発生時に遺言書の通りに相続している事になります)

お子さんがいるご家庭の場合の相続は、配偶者1/2、子供全員で1/2です。子供が二人居れば、子の相続分は各1/4となります。子の相続分は長男次男長女次女等に関わりなく、平等です。また、婚外子で認知されている子も相続分は他の子と平等です。
お子さんがいらっしゃらない場合、亡くなられた方のご両親がご存命なら、配偶者2/3、ご両親1/3です。
ご両親が亡くなられていて亡くなられた方のご兄弟姉妹が居る場合、配偶者3/4、兄弟姉妹1/4です。

お子さんのいないご夫婦の場合、配偶者に全ての財産を相続させたいと思われましたら、遺言書の作成が必須となります。ただし、親御さんがご存命の場合、親御さんには遺留分がありますので、親御さんが遺留分の請求をされたら、全財産という訳にはいかない場合が起こりえます。因みに兄弟姉妹には遺留分はありません。

【遺言書がない場合】
相続発生時に分配についての話し合い「遺産分割協議」を行って「遺産分割協議書」を作成するか法定相続分通りに分配するかの二択になります。遺産分割協議書は、全員で話し合い全員が同意した内容を書類にした上で、全員が署名捺印します。一人でも欠けると無効です。
法定相続分以外の分配にする場合、相続手続には「遺産分割協議書」の提示が必要となります。

【遺言書がある場合】
遺言書が残されていたら、その内容の通りに分配するのが基本です。もしその分配に不公平があり、遺留分が認められている相続人が遺留分に満たない分配だった場合、「遺留分侵害額請求」をする事が出来ます。あくまでも「する事が出来る」ですので、本人が申立てなければ、そのままの分配となります。

ところで、遺言書は遺言者の意思に基づき作成されたものですので、その通りに相続する事が当然の事である訳ですが、遺言書の内容について法定相続人全員で話し合い、分配を変更しようという合意をすれば、変更する事が出来る場合があります。(民法第907条)ただし、遺言書に遺産分割協議を禁止すると書かれている場合などには、遺産分割協議は出来ません。(民法第908条1項、2項)遺言書通りの分配となります。

また、遺言書で遺言執行者の指定がある場合は、遺言執行者の同意が無ければ変更できませんし、遺言執行者が指定されており、遺贈(法定相続人以外の人への贈与等)について書かれていれば、遺贈を受ける人(受遺者)の同意が必要となりますので、実際には遺言書通りに分配する事になると思います。

遺言書がある場合の相続手続は、公正証書遺言書ならその遺言書を、自筆証書遺言書であれば家庭裁判所の検認を受けた遺言書を、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書であれば「遺言書情報証明書」を提示する事になります。

「私には遺留分があるのに貰えていない」と言われる方がいらっしゃいますが、遺留分が問題になるのは遺言書がある場合のみで、遺言書が無いのに勝手に他の相続人が法定相続分とは違う分配をしてしまったような場合は、そもそもその分配は法的に無効であり、「遺産分割協議」を行う事になります。つまり、遺留分侵害額請求の対象ではありません。

話し合いに応じて貰えない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停や審判を利用する事になります。調停、審判は弁護士案件となります。因みに、少し前のデータになりますが、令和4年に家裁が取り扱った調停と審判の件数は、約1万3000件でした。

という事で、相続は「法定相続分」が民法で定められており、それを変更しようとすると生前であればご本人が作成した「遺言書」、死後であれば遺言書が無い場合に法定相続人が全員で話し合う「遺産分割協議」が必要になります。法定相続分を正しく理解するには、法定相続人を確定する事が基本です。

相続人の特定は、民法の知識が無いと難しいものです。依頼者が思われている相続人の人数と、実際の相続人の人数が違うケースは良くあります。特に、代襲相続、数次相続が発生している場合、確定は困難だと思います。
法定相続人を正しく把握する。ご本人が遺言書を作成する。遺言書が無い場合、ご遺族が遺産分割協議書を作成する。これらは相続の基本となります。
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