遺言書作成に必要なもの
高齢化に伴い、遺言書の必要性がメディアでも良く報道されていますが、実際にはどれぐらいの人が遺言書を作成しているのでしょうか。
日本公証人連合会のホームページによると、ここ10年で作成された公正証書遺言書の年間作成件数の平均は10万4232件です。2021年度の調査によると、65歳以上の人口は3621万4千人ですので、まだまだ遺言書を作成している人は少ないと推測出来ます。
平成29年の法務省の調査によると、55歳以上で自筆証書遺言書を作成した事がある人は3.7%、公正証書遺言書を作成した人は6.4%ですので、合計しても1割程度という結果です。
この調査の後にコロナ禍となったので、遺言書の重要性を感じる方は増加傾向にあるかもしれません。
遺言書作成は、15歳以上で遺言能力があれば誰でも作成出来ます。今回は作成要件以外のお話しをしたいと思います。
遺言書を作成する時には、遺言書の本文以外に、次の書類の作成も必要になります。
①財産目録
遺言書は、何を誰に渡すのかを記すものですので、財産の把握が必要になります。
また、公正証書遺言書作成時には、資産の額により公証役場の手数料が決まりますので金額の提示も必要です。
➁相続関係説明図
民法で定められた相続人の特定をし、相続関係説明図(家系図のようなもの)を作成します。
公正証書遺言書作成時には、この相続関係説明図も併せて提示します。
①については、不動産がある場合、不動産の「登記簿謄本」と、直近の「固定資産税納税通知書」が必要です。作成時には、預貯金について銀行名、支店名、口座番号、そして公正証書遺言書の場合は残高も資料として必要となります。株や投資信託などの証券会社名や信託銀行名、銘柄、口座番号なども必要です。
➁については、遺言者の出生から現在までの戸籍謄本全てが必要になります。遺贈をする場合は、ご自身の戸籍の他に、相手が親族であればその方との関係が分かる戸籍、親族でなければ遺贈を受ける方の住民票が必要になります。
遺言書作成というと、遺言書本文を自分が考えたまま書けば完成すると思われている方は多いかもしれません。遺言書は契約書とは違い、民法で様式が細かく定められているものです。
戸籍を集め、法定相続人を特定していく事から遺言書の作成はスタートします。
自分の親族は把握しているから戸籍は必要ない、と思われるかもしれませんが、その内容を第三者に証明する事が必要ですので、公的な書類、つまり戸籍の収集が必要になるのです。
遺言書は相続発生時に金融機関や法務局に提出する事になりますが、その折には出生から亡くなられた事を示す戸籍の提出が求められます。
法的に不備のある遺言書は無効となりますし、書いた文言によっては、ご本人が意図したものとは法的には違う内容になってしまう事があります。また、特に遺贈の場合に起こりがちですが、受遺者(遺贈を受ける人)が結果的に受け取る事が出来なくなる場合もあります。
戸籍の取り寄せと読み込み、法定相続人の特定は手間と時間と民法の知識が必要です。また、遺言書の文言をご本人の意図したものに作り上げていくには、民法の知識が必須です。
財産目録を作成していく中で、相続税の対策が必要である事が分かる事もあるでしょう。その時には税理士のアドバイスを受ける必要があるかもしれません。
当事務所では、遺言書を作られる方からじっくりお話しを伺い、その方の考えに即した文案の作成と、必要と思われる事のご提案をし、税金等についてご依頼があれば専門家をご紹介しています。
遺言書の作成を考えられた時には、せっかく作る訳ですから、ご自身の思った通りに相続が実行されるように、ぜひ行政書士などの専門家に相談してみてください。