相続と贈与税

前回、「家族間贈与と贈与税」についてのブログを書きました。今回も内容としては「家族間贈与」ではありますが「相続時」にそんなつもりはないのに起こりがちな贈与と回避方法について書きたいと思います。

取り上げるのは、保険金相続不動産売却についてです。

【保険金について】
生命保険に加入されている方は多いと思います。生命保険は死亡時に保険金が保険会社から受取人に支払われます。

では、ここで問題です。死亡保険金は「相続財産」なのでしょうか?

答えは「×」です。相続財産ではありません。相続財産とは、亡くなった方が亡くなった時に持っている財産であり、保険金は亡くなった後に支払われるものだからです。
という訳で、死亡保険金は相続財産ではなく、「受取人のもの」なのです。(相続と保険についてはこちらをお読みください)
では、保険金に絡んでありがちな贈与税の問題とは何でしょうか。具体例をあげてみましょう。

未亡人の母親と同居の長男、結婚して別居している長女家族が居ました。母親の死後、母親が自分で保険料を支払っていた生命保険の保険金500万円が、受取人である長男に支払われました。
母親は遺言書を残さなかったので、残された長男と長女は遺産分割について話し合い、全ての遺産を1/2の割合で分配する事にしました。話し合いの中で、妹は兄が受け取った保険金も半分欲しいと主張し、兄は承諾しました。
ここで問題です。兄から妹に「250万円」を一括で渡した場合、贈与税はかかるのでしょうか?

先に述べたように、保険金は「兄の資産」ですので贈与税が課税されます

 課税対象額=250万円-110万円(暦年贈与控除額)=140万円
 贈 与 税=140万円×10%=14万円
 税 引 後=250万円-14万円=236万円

この14万円の贈与税を回避するのはどうすれば良いのか。250万円を一度に貰うのではなく、暦年贈与の控除額内で数年に分けて受け取れば贈与税はかかりません。

【相続不動産の売却について】
ご両親が亡くなり、ご実家を相続した時に、家を売却して売却益を兄弟姉妹で分割するという方は多いと思います。これを「換価分割」と呼びます。
換価分割する時に気を付けないといけないのが、「遺産分割協議書」の書き方です。

例えば、3人兄弟が親の家を相続しました。既に全員それぞれに持ち家があり、話し合いの結果、実家を売却する事にしました。
家は長男が中心になって売却手続きを進める事になったので、不動産売買契約等が簡単に出来るようにまずは長男が家の名義人になる事にし、家が売れたらその売却益を3分割する事にしました。相続税については、控除額内だったので課税対象ではありませんでした。
ここで問題です。この場合、「実家」は「相続財産」なので、兄が売却した後の分配で「贈与税」がかかる事は無いのでしょうか?

答えは、「遺産分割協議書」の書き方によっては贈与税がかかる、となります。
例えば「遺産分割協議書」に「売却後に、話し合った割合で換価分割をする旨」を書かずに、兄一人の名義で「相続登記」を行ったとします。兄弟間の話し合いの内容が書かれていない以上、第三者からは兄の単独相続に見えます。その状況で、実家の売却後に兄が売却益を弟たちに渡した場合、兄の資産を渡した事になりますから、「贈与税」が課税されてしまいます。

家の売却ですので、換価分割による一人当たりの受取額は高額になる事が予想されます。
例えば、売却益が1800万円だった場合の一人当たりの贈与税額をシミュレーションしてみましょう。

売 却 益 =1800万円÷3人=600万円
課税対象額 =600万円-110万円(暦年贈与控除額)=490万円
贈 与 税 =490万円×30%-65万円=82万円
         ※贈与税は額によって税率が細かく設定されています

税 引 後 =600万-82万円=518万円

なかなかの減額だと感じませんか?「遺産分割協議書」に必要な事項を盛り込んでいれば、贈与税はかからなかったので、600万円を手にする事が出来ました。残念な結果です。という訳で、協議書をどのような内容にするのかがとても重要になります。
遺産分割協議書の作成は、専門家に依頼した方が良いと言われる理由の一つがこの「換価分割」案件といえます。

相続手続は、誰にとっても慣れない事ばかりです。自分達で必要な書類を作成する事は勿論できますが、思わぬ結果になる事があります。
いつでもご相談ください。

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